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「三成は正攻法以外でなければ気を引けぬが、あまり突飛な物は無理ぞ。」
「分かった、ぶっ飛んだのとかは駄目なんだね。」
「ほお、主にしては聡いな。
ではどうする。」
「一回三成倒しちゃうとか。」
「それはぶっ飛びの極みではないのか?」
まあ一番確実だが、無駄ないざこざを起こしたくはないのでとりあえず却下に。
「あ、じゃあ私が三成に『刑部とご飯食べに行ってくる』って言ってみれば良いよ。
刑部は三成の友達だから、『何勝手に私の友と飯を』みたいな流れに持ってけるかもしれないよ。」
「…成る程、対抗意識を持たせれば食うかも知れぬな。
試す価値はある。」
「よーし。
三成ー!」
手鞠が叫びながら勢いよく引き戸を開け放つと、鋭い刀の切っ先が瞬時に眼前へ飛んできた。
「うぉわ!」
本能的に側面からはたきおとしたが、眼球に触れるか触れないかの瀬戸際だった。
「うわびっくりしたー。」
「…手鞠か。
何の用だ。」
「三成ご飯食べないの?」
「そのような些事に時間を割くなら素振りの一度でもした方がマシだ。」
「そうかー。
じゃあ私刑部とご飯食べてくる。」
「ああ、早急に済ませて私の太刀の相手をしろ。
空振りでは切った気にならん。」
「…あー…うん、ちょっと待って。」
ピシャッと戸を閉め、心なしかしゃがんで声を潜めた。
「なんか反応薄かった…もっと『私もいなければ許さぬ』とか言うと思ったよ。」
「そうさな。
…思うに手鞠、我からすれば主も三成から友としてくくられておるでな。
友同士が飯を食うのは至極全うよ。」
「私友達認定来た!」
「ああ、以前雨の夜に太閤の名前の発音はどちらが正しいかを主と三成が一晩中争ったことがあったであろ。」
「あ、『流れるように言うべき派』と『"ひ"に力をこめるべき派』のあれ?」
「左様。
あれで奴の中に芽生えたらしい。」
「へぇー…そっか、そうやって三成と刑部も…」
「いや、断じて違うが。」
とりあえず吉継に軌道修正をしてもらい、話の軸を元に戻した。
友人へクラスチェンジ出来たことは嬉しいにしても、作戦の立て直しでは意味がない。
「うーん…じゃあもう三成の友達じゃない人連れてこよう。」
「…ああ、刹那に思い浮かんだわ。」
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