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「鍋BIGすぎんだろ…」
「ここには僕以外に大食漢が二人いるからね。」
「半兵衛春巻おいしいです。」
「それは春巻じゃなくて春菊だろう手鞠。
秀吉、手鞠は春菊が美味しいと言っているよ。
君も食べなくちゃ。」
「うむ…」
「食えねえのかよ?
まあこっちも野菜に関しちゃ小十郎がかなり食わせてくるが…」
「失敬だな君は、秀吉が食べられない物なんてあるわけないだろう、ただ昔の抵抗感が残っているだけだ。
そもそもその抵抗感でさえまだ昔彼の母君が好いていたにも関わらず貧しさ故に滅多に食べさせてあげられなかったという切実な理由があるからで秀吉の非である箇所は何一つ…」
「だああ変なswitch押しちまった!」
半兵衛のマシンガントークに侵入者の精神が蜂の巣にされている中、慣れている秀吉と手鞠は傍観しながら七杯目のおかわりを食していた。
そんなとき。
「…政宗様、ようやく追いつきましたぞ。」
やれやれという風体で置いて行かれた右目がやってきた。
「全く、君達はいつまでたっても二人でいなければ何も出来ないのかい。」
「そんなにベタなつっこみが欲しいのかよてめぇは。」
「…それで、要件は何なんだい?」
「あ?」
「ここに来た要件だよ。
話があると言っていただろう。」
「………ああ、すっかり忘れてたぜ。」
「君の所の筆頭はこれで大丈夫なのかい片倉君。」
「心配には及ばな―」
「…内容も忘れたがな。」
「切実に心配している。」
「だろうね。」
とりあえず吹っ飛ばした襖を直してくれないかと言うと素直に直した。
「半兵衛鍋が冷めます。」
「ああそうだ、なら悪いけどこの話は終わらせてもらおうか。
ねえ秀吉。」
「うむ、鍋でも食って行け。」
「決してそういう意味で君に同意を求めたわけじゃないんだよ秀吉。」
念を押したにも関わらず取り皿と箸を手鞠に用意させているのを見て、この流れはいけないと感じる。
いつもは切り札になる手鞠もこういう場合は秀吉の命令重視になる(そうしつけた)ので恐らく使えない。
「外は野分ぞ、やむまでの間程度なら問題あるまい。」
「しかし秀吉、何の得もないだろう。」
「損とて無かろう。」
「…手鞠はどう思う?」
「人参がいい感じになりました。」
「……仕方がないなあ。」
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