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3、かくれんぼ
自室で松永が書き物をしていると、ふと開いていた障子の先にある庭から枯れ葉が一つ舞い込んだ。
ふと見れば外の景色はもう冬の入り口で、巡る季節の速さは本当に目まぐるしい。
「……秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ――」
「うわあー!
松ちゃんちょっとお邪魔します!
主に机の下に!」
「……おどろかれぬる。
…卿が風とは知っているが、せわしな過ぎやしないかね。」
「ん?」
「…こちらの台詞だ。
机の下に潜る作業に戻りたまえ。」
「ありがとう松ちゃん。」
ごそごそと小机に潜る音を聞きながら、不意に辺りに漂う殺気を気取る。
何事かと机下の住人に尋ねれば、多少言葉を濁した後。
「今日ここに来る途中に見つけた滝の近くに風魔の衣装が置いてあったから、ちょっとそれにいたずらしたらえらい追いかけられた…」
「それでこれほどの逃げようか。
卿のことだ、また他愛ない戯れを仕掛けたのだろう?」
トントン
「…という間に本人が来たようだな。」
ぴゅっと机に頭も隠した時、襖を開けて風魔が入って来た。
が。
なぜか全身が緑色だった。
「…卿、全身草木染めはちょっとした悪戯に分類されるのかね。」
「さすがに反省してる。」
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