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――――――…
「…政宗様、南の方へ行かれたご友人から、『何をしてるか』といった文が来ましたが…」
「……寝っぱなしだっつっとけ。
畜生あのおっさん、容赦なく打ちのめしやが…っ痛え!shit!」
あの襲撃から幾夜か明けた昼下がり。
全身のあちこちに包帯や湿布を貼りながらも自室で退屈そうにしていた政宗へ、小十郎の容赦ない包帯変えが襲った。
その様を襖にもたれながら腕を組んで眺めていた孫市も、懐から文と果物を取り出す。
「…我らの元に寄生している慶次という風来坊からも『ご苦労さん、生きてて何より』という文と見舞いの品が届いているが。」
「あいつ、こうなること分かってやがったのか…」
「すまない。
我らの誇りにかけて、決してあってはならぬ結果だ。」
「いや、竜の爪が無事だっただけ上等……ッ小十郎!もっとsoftにやりやがれ!」
「甘えてはなりませぬ政宗様。」
全身をひりひりさせながら、とっくに契約は切れているというのに未だこの地に留まっている孫市を盗み見る。
昔からの馴染みというのは仕事上では関係ないといっておきながら、こちらの回復を待っているのだ。
「これではこの冬は寝越冬だな。
安心しろ、報酬の野菜の旨さに免じて冬の間は貴様の警護をしてやろう。」
「そいつはluckyだ……。
……おい、お前は松永の友人とやらを知ってるか?」
「…私の聞き間違いでなければ、そんな奇特な存在はお目にかかったことがないな。」
「だろうな…」
やれやれと再び天井を見上げながら不自由な体を横たえた。
「だが自分の身は自分で守るぜ、せめて平和な日常くらいはな。
お前だって自分の生活なりダチなり思い人なりいんだろ。」
「だからお前はからすのままだと言っている。
我らはともかく、私は四六時中会っていなければ互いを信じられないような人間と思いを重ねてはいないんでな。」
「ごちそーさん…」
これ見よがしに吐き捨てれば空恐ろしい眼差しで見下ろされる。
即座に前言撤回してしまう自分の弱さも問題だ。
それからとある竜は体の抵抗を右目に押さえ込まれ、口先の抵抗を孫市に押さえ込まれ、何だかんだで過保護にされて冬を越したという。
(…お前は俺のダチか?)
(ほう、最近慶次から南蛮語を一つ覚えてな。
聞かせてやろうか)
(………………No thank you)
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