松永久秀 | ナノ


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「慶次はNo countか…あと手を貸してくれそうな奴は……」

「あ、おーい伊達ー。
見つけたー。」

「!」



ふと聞こえた懐かしい声に振り向くと、いつぞや友人になった存在がこちらへ駆けてきていた。
相変わらず背に槍を背負っているというのに大層な速さで。



「Hey,my friend!
よく来たな!」

「おー。」



バッチン!と手を叩き合うと、政宗の体のどこかからあのシャランという音が聞こえたことに気づいた。
聞いてみれば、胸の内側からあの赤いガラスの首飾りを取り出す。



「こいつは最高にcoolだぜ。
遊びに来たのか?ならWelcomeだ。」

「うーんそれが、もう寒くなるからこれから南に行こうと思ってて。
さよならを言いに来た。」



他の友達にはもう言って来たからと続ける友人に、残念そうな顔を浮かべる。



「そうか…実はお前に手伝ってもらいてえ事があったが、それじゃあ無理そうだな。」

「手伝い?」

「ああ、どうにもしつけえ奴とずっとドンパチやっててな。
一度きっちり叩こうとは思ってるが、どうにも力が足りねえ。」



なるほど、と状況が飲み込めたのか向こうがうなずく。
しかしどうこう言っても仕方がないので政宗が振り切ったように頭を振った。



「相手は危険な野郎だ、ダチを巻き込むのがおかしかったな。」

「そんなに危ないの?」

「ああ、お前は大して知らねえ方がいい。」



向こうでも達者でな、と言ったついでに、要望されたのでまた刀を抜いて見せた。
この友人もその後すぐに去っていったのだが、その際に。





「あ、単純に仲間が欲しいなら、雇っちゃえばいいんじゃないかなあ。
特にこの時期なら、畑のものが採れないから。」





笑顔で残していったその台詞に、ピンと何かが繋がった。
















「そうして我らの元へ来たわけか。」

「that's light」



雑賀衆。
雇われ事と言えばまず先に思い浮かんだ存在の元へ行ってみれば、女頭領が腕を組んで待ち受けていた。





「昔からの付き合いのよしみはあるが、それに見合った報酬を貴様が支払えるのか?」

「あいにく俺達も資金繰りには詰まっててな、金はねえ。
だが新鮮な農作物ならたんとあるぜ!
こっちには野菜に厳しいおっそろしい竜の右目がいるんでな!」

「威張れたことか……」



溜め息混じりに孫市が髪をかきあげた。
しかし眼孔から光は消えていない。





「金が無いようでは話にならんな、我らの価値を示す物がない。
……と言いたい所だが、この季節の菜類は貴重だ。
我らの所望する量を、ということなら話を呑んでやろう。」



YES!とこちらも味方同士で手を叩き合った。
あの助言は大変的確に効いたようだ。



「敵は松永軍か…とんだからすだ。
しかし悠長に我らの元へ訪れていいのか?
今現在お前の国は手薄だろう。」

「それは問題ねえ。
小十郎、あいつは。」

「松永は昨日、備前に入ったと見張りの兵から報告がありました。」

「備前……あの南蛮の新興宗教の城か?
まあいい、我らも準備は念入りに行いたいからな。」



そう言いながら重厚な銃を握りしめ、天高く火薬を撃ちはなった。
いつ訪れても不敵な笑みと態度を崩さないこの存在に、何となく松永と似ているよなと告げることは自殺行為だとさすがに知っていたので、大人しく赤い鐘の音を聞いていた。



 

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