▼
とりあえず数少ない友人に声をかけてみることにした。
「お、久しぶりだなあ奥州も。
伊達の旦那は元気だったかい?」
「ああ。
お前も相変わらずのfree dom具合だな慶次。」
「風来坊って言ってくれよ。
横文字は何だかこそばゆいや。」
そう笑う慶次の変わらなさっぷりに安心しつつ、今日呼んだ理由を聞かれたので単刀直入に切り出した。
「…お前、松永って野郎を知ってるか?」
「……松永?」
その瞬間、浮かべていた朗らかな笑顔が凍りついた。
心なしかその肩の夢吉も。
明らかに何か知っているらしい。
「……あ、あーあーあー、知ってるよ、あの松永だろ。
織田のところの。」
「そうだ。
実は俺達もあいつに目ぇ付けられててな、一度叩きてえんだが力を貸してくれねえか。」
「はっはっは、あいつに狙われてんのかー大変だなー。
あ、そういや最近一つだけ南蛮語覚えたんだよ。」
「ほぉ、何だ?」
「『パス。』」
「…………………………………オーケィ。」
あの顔はガチの真顔だったと後の政宗は語る。
ごめん!と何とも朗らかに去って行った当人を見送りつつ、振り出しに戻った問題を振り返った。
(なら他にあのおっさんをぶっ叩く力になれそうな奴を知らねえか、同じ恨みを持ってるだとかよ)
(それは山のようにいるから言い切れないけど、逆の発想になる奴なら知ってるよ)
(逆?)
(友人、とか)
その言葉に政宗の体が固まった。
もとい傷口が開いた。
(あの松永と友人やってるくらいだから、結構特殊な友人関係らしくてさ。
叩きたいって言えばあっさり手伝ってくれるかも、だよ?)
(……あのおっさんにダチがいんのか)
(まあそこは俺もつっこみたかった所だけど……)
知っていても良いんじゃないかとの言葉に同意する。
(そのダチの居場所を知ってるか)
(いや、そいつも日の本を結構移動してて会える可能性は低いんだよ)
(何でも良い、情報は持っておく)
(そっか。
じゃあえーと…とりあえず分かりやすく武器は身につけてたと思うよ。
それから何となく松永と似た服着てたかな)
(ほう)
(そんで松永に劣らない女好きで、遊子で、酒は飲めなかった気がするな。
とりあえず女の子連れて行けば確実に協力してくれるんじゃないか?)
(類は友を呼びすぎだろ…)
(いや、はは…)
その会話の後にすぐ慶次は帰って行った。
prev / next