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机上の骨董品をしみじみ眺めている手鞠の視線を追いながら、口からついて出る言葉はそのままにした。
「作り物の良い悪いってどうやってわかるの?」
「己の欲望が欲するかどうかだ。
分かりやすいだろう?」
「うん。」
組んだ両手を机上に置き、その上に顔を乗せたまま手鞠は目の前の品々にどれの一つも触れようとはしない。
触れるなとは言ってあるがその言葉を忠実に守っているというより、触れることには興味が無いのだろうと松永は思う。
「…人も作り物?」
何とも無しに伏し目がちで呟いたその一言。
松永は幾ばくか黙り、次に口角を引き上げて肯定した。
この娘は愉快だと思う。
少なくとも、一夜を歓談だけで共に過ごせるくらいには。
「松ちゃん眠い。」
「明日には立つのだろう、一晩くらい友との語らいに付き合いたまえ。」
「最近の松ちゃんは女々しい感じが増えてきたね。」
「この齢で年々雄々しくなるのも考えものだと思うが。」
「そ?」
じゃあ私が代わりに雄々しくなるよ、なんて笑いながら発した提案を、それは頼もしいとからかいで返した。
行灯に灯った柔らかい明かりが暗い室内に充満する。
それでも部屋の四隅に生まれた淡い佇むような闇は、限りなく自分達に似ていると思う。
もしくは彼女に。
「卿が来る日は常に雨であれば良いのだがな。」
「やだよ…」
「そう言うな。」
互いに小さく口元を笑わせて、昼と変わらない言葉の応報を再び始めながら朝を待った。
雨は一晩中降り続いた。
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