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炊き込みご飯でも作ってもらおうと思って食欲のみではるばる入れ物の竹を狩りに来た。
「青竹やー竿ー竹。」
「なぜか懐かしいな。」
吟味しながら手鞠の槍ですぱすぱと手頃な竹を搾取していく。
誰の土地かは知らない。
「あ、たけのこ!」
「時季外れだが貴重だ。
採っていくか。」
「いやさぁ!」
「卿?なぜ刺した?」
「捕らえなきゃと思って…」
「足を断つのは基本だな。
あればの話だが。」
そんなことを言いながら多少離れて見ていた松永の視界に白黒の巨大な生き物がぬらりと入り込んできた。
虎だ。
しゃがんでたけのこを狙うその背後に禍々しい口を開けてにじりよっている。
「…卿、右手の先はついているかね。」
「?
うん、ほらぐー。」
「そうか、それを顔の横に構えて拳を空に向けると良い。」
「こう?」
「ああ。
そして懇親の力で空へ拳を突き上げると…」
「うりゃあ!」
「ぎゃうん!」
下から顎へ思い切りアッパーを食らった巨虎がのけぞり、後ろへ倒れた。
「うわ松ちゃん!
なんかいきなり後ろに倒れた虎が出てきた!」
「召還の呪文だ。
食料に困ったら使いたまえ。」
「松ちゃん太っ腹だ!」
「いやいや、礼には及ばない。」
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