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しかし自分はこれ以外に酔いをさます方法を知らないと、残念すぎる回答が来た。
酔いをさましたいのは手鞠も同じことにしろ、なにぶん松永よりも格段に酔いの経験値が少ない。
仕方なく。
「三好ー、三好ー。」
「どの三好だ。」
「じゃあ次男。」
「じゃあとは何だ。」
「お前だそうだ。」
「なんだ私か。」
護衛で風魔と共に来ていた三好の部屋を訪問する。
「何をふらついている。」
「気のせいだよ。
酔っちゃったのを治すのってどうするの?」
「…その辺りをうろうろしていれば良いだろう。
要は時間だ。」
「だって松ちゃん。」
「良いことを聞いたな。」
「松永殿!?」
酒、酔い、松永で記憶の傷口が開いたらしく三人全員が明後日の方向に視線を向けた。
その隙をついて、こんな夜更けにだの何だのを言われぬ間にさっさと屋敷の外へ出た。
「まあその辺歩いてればさめるかぁ。」
「酷いふらつきだな、卿。
千鳥足だ。」
「ふらっふらする…松ちゃん良いなあ足に来なくて。」
「火種の喜びそうな家があるな…」
「ああ、意識がふらっふらかぁ…千鳥頭かなあ。」
とりあえずゆっくりゆっくり歩き出す。
なるべく足をまっすぐにさせようとする手鞠と、心根をふらつかせたままの松永とで。
「松ちゃんこれからどこ行く。」
「そうだな…無難に山か。」
「山火事はやだよ。」
「そうそう私と火を結びつけるのはよせ。」
「だって松ちゃんの生きてる理由だし…」
「卿は残酷だな。」
「逆にね、逆に。」
「ああ、逆にか。」
「…えーっと何の話ししてたっけ…」
会話が成り立っているのかもゆめゆめ分からないまま、それでも話し続けたまま宛もなく足が向く方へ歩いていった。
そうして夜の空が白々しくなってきた朝方に、ようやく家に戻ってきた二羽の千鳥の姿があった。
次の日片方が二日酔いに負け、借りてきた猫のように静かにしていたとかいないとか。
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