松永久秀 | ナノ


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「でも誰かとご飯は楽しいよ。」

「…まあ否みはしないが。」



どろん



一足先に食べ終えたのか、風魔が一礼と共にその場から消えた。
皿まで一瞬で洗っていく辺り律儀な男だ。



「…あれもそう思うことがあるのかね。」

「さあー。」



ぺろりと二皿を食べ終えた手鞠がまた手を合わせてごちそうさま、と告げた。
教える者もいないのにどこで習ってきたのやら、と考えを巡らす。



「松ちゃんまた作ってね。」

「次があるとするなら卿だ。
忘れたわけではあるまい。」

「覚えてた…ちゃんと作るよ。
でもそれ抜きでも松ちゃんうまいと思う。」

「そうかね。」

「うん。
さっき話した遊郭のお姉さんよりうまかった。」

「!」



※注
遊郭で女郎の手料理を食べられるのは相当親しいかよほどの金持ちのどちらか。
この場合は前者。



「…松ちゃん?
どうした?」

「…いや、試合に勝って勝負に負けた感じだ。」

「?
ややこしい。」

「だろうな。」



気にするな、と一言与えられたのでその通りにすることにした。



「さて、腹ごなしに城下を巡るか。」

「松ちゃん食べてないよ。」

「その代わり卿が食べただろう。
一人前分くらい付き合いたまえ。」

「じゃーお茶飲もうお茶。」

「悪くないな。」



わーいと手鞠が駆け出し、その後ろを松永が歩いて追ういつもの形で部屋を出た。
城下の市場で食材を揃えられ、もうその日の夜に作らされることになるとは全く予測していない手鞠だった。


 

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