▼
『寛大者達』
松永殿は時間の概念が寛大だ、と身近な者達に言われた当人。
そんなつもりは全く無いにも関わらず、周囲の者も同様に頷いた。
曰わく、「少し」や「少々」といったものの考えが他者とは違うとのこと。
遠回しに諫められているのだろうが、初めて自覚したことなので表立って咎めはしなかった。
少し火をつけるといって焼き尽くすし。
少々踏み入るといって襲撃するし。
そんなことを言われても火をつけるとは即ち燃え広がるということで、踏み入ることに相手が抵抗すれば襲撃ということになる。
間違ってはいない。
「他に影響を与えてはいないだろう、まあ見逃してくれ。」
「知らない所で与えているかもしれませぬぞ…」
いい加減耳が痛くなってきたところに、ひょいと城壁を乗り越えて手鞠がやってきた。
「松ちゃんやっほー。」
「やあ手鞠、久しいな。」
「あ、さっきそこでちょっと魚釣ったんだけど、食べないから松ちゃんにあげる。」
「ほお、鯛か何かかー」
「はいカジキマグロー。」
「ほら!松永様!」
「何も聞こえないな。」
prev / next