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『蘇生法』
「松ちゃん暑い…」
「夏はそういうものだろう。」
「そっか松ちゃんも暑いのか…」
「聞きたまえ。」
縁側から這うように上がってきて、私の座っている小机の下に潜り込んだ。
陰を求めてのことなのだろうが、まあ好きにすれば良かろうとほうっておいた。
「………」
「おや、早かったな。」
再び目の前の執務に視線を戻した時、雇っている忍びの姿が視界に引っかかる。
使いに頼んだ巻物を受け取って労いの言葉をかけたが、まだその場に立っているのは他に用がないか尋ねているのだろう。
「今はこれといってないが…手鞠、何か聞きたいことでもないかね。」
「……」
「手鞠?」
「……」
「……至急水に返してやってくれ。」
忍はこくりとうなずくと、手鞠の襟ぐりを掴んで外の川へ飛び出していった。
どっぼーん
「あはははは!」
「早い復活だな。」
その後巻き添えをくらったらしい忍共々ずぶ濡れで戻ってきた。
正直少し羨ましかったのはまあ秘すれば花だろう。
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