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飲み干して多少落ち着いたように見えたものの、ソワソワしたまま交互に私と孫市を見比べている。
全然落ち着いていない。
「伊達には生涯の伴侶いないの?」
「いねえよ!テメェ、本気の本気でま、孫市と…」
「うん。私は今まで炬燵と氷とお姉さん二人と火鉢に告白してて、その内の一人が孫市なんだ」
「アンタ意外と節操ねぇんだな…」
「そうかな」
「からすめ、節操と見境は別物だ。多数との関係を隠匿する者や、関係を己で管理できない者が『節操なし』と呼ばれるに過ぎない」
「いや、loversは普通一人だろ!」
「…おい片倉、こいつは生娘か?」
「…政宗様の周りはほとんど野郎ばかりで、こう言った色恋沙汰に免疫がなくてな…」
やれやれ、と孫市が呆れたようにお茶を啜る。
「民と交わりを持ちたいと思案していた折に、丁度よくこいつに会ってな。話すうちに意気投合し、我らの方から誘った」
「誘われたんだー」
「すげえsoftに話してやがるな…小十郎、外の国はどこもこんな感じか?」
「まあ政宗様も多少潔癖ではありますな」
「マジかよ…雑賀衆はそれでOKなのか」
「我らは世襲制だが、能力の高い者がいれば血筋を問わず受け継がせる。三代目だからと子作りに縛られる事は無い」
孫市は淡々と述べて、いい加減シャンとしろ、と伊達を叱った。
それでも伊達はまだ腑に落ちていない顔をしている。
「政宗様、何か気になる事でも」
「いや気になるなら全部気になるけどよ、何かここで引っかかってんだよな」
「何だろ、孫市の事?」
「…ああ思い出したぜ。確か慶次は孫市に惚れ込んでたんじゃあねえのかよ?何でアンタと孫市がくっつい」
「聞いでよ独眼竜うううう!!!」
「うおあ!」
真っ赤に酔っ払った慶次が伊達に飛びついた。
咄嗟のところで膝を立てて倒れるのを食い止めた伊達の叫びも、多分聞こえていない。
「まじで酷いんだぜごいつらあ!聞いてくれよお!!」
「Sit!いつの間に酔っ払ってんだテメェは!」
「生涯の伴侶が話題に上った辺りから浴びるように飲みはじめましてな」
「テメェも止めろよ小十郎!」
「あれは三年くらい前かなあ……」
「全く、また慶次の泣き語りが始まるぞ」
「これ長いんだよね」
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