▼
とりあえず。
ひとしきり騒いだ後、政宗は汁粉を、手鞠は桜餅を、慶次は梅昆布茶を食べ終えた所で一息つく事が出来た。
「……じゃあ話は戻るけど、いい?」
慶次の言葉に、政宗と手鞠が頷く。
おほん、と咳払いをして空気を改めてから。
「……こっちが松永の友人であり、俺と友人でもある紫菊だ。元々紫菊とさやかが仲が良くて、そこから俺も知り合った」
「おう、分かったぜ。で、こいつがオレのダチの前田慶次だ」
「はい。慶次久しぶりー、こちらは最近友達になった伊達です。松ちゃんと伊達が争ってたのは知ってたけど、刀を狙ってるのは知らなかったよ」
「分かった。まあこうして相手の友人を紹介しあって思うのは…」
ふう、と息を吐く。
「…日の本って案外狭いな」
「…That's right」
「本当だね」
三人で顔を突き合わせ、車座を描いて座っている。
あれから話し合って分かったことは、自分達は紙一重の情報の足りなさで噛み合っていなかったことだ。
「そもそもあんた、紫菊ってnameだったのか?」
「ああ、これは俺が付けた呼び名だよ。紫菊って名前が無いからさ、会った時にこっちが名前付けんの」
「…ああ、だから松永のダチの情報の中に名前が無かったんだな」
「そうそう。言ったところで場所が変わると違う名前になってるからねー。松永は確か手鞠って呼んでたよな」
「そうだね。さやかも違う名前で呼ぶよ」
「あんた雑賀衆とも知り合いだったのかよ…顔広すぎやしねぇか」
「日の本をぶらついてる遊子なんてこんなもんだよなあ?紫菊」
「そうそう」
確かに二人は風来坊。
日の本を行脚している最中にどれだけ多くのツテを作れるかが何より重要だ。
ねぐらを持たずに移動し続けるのであれば、全国に知り合いがいなければ成り立たない。
「だったら話は早いぜ。あんたも力を貸してくれるんだな?」
「うん、貸すよー」
「え、いいの?独眼竜」
「何がだ?」
「いや紹介しといてアレなんだけどさ。一応紫菊も松永と親しいから、疑うとかしないのかなーと」
今度こそきちんと伊達は鼻で笑った。
「しねぇよ。そんな事で疑う相手とダチにはならねぇからな」
「ま、それなら良いんだけどさ。そんじゃまあ、いっちょやってみますか!」
「Yeah!!」
「おー」
prev / next