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4、鬼ごっこ
いつも通り手狭な部屋で、あちらはごろごろと転がりながら書をめくり、こちらは縁側に向かった小机で書をめくりと、思い思いに過ごしていた時のこと。
「あ、松ちゃん今お日様どれくらい?」
「馬の刻辺りだろう。」
「何だってー。」
松永が手元の書から目を離さずにそう言えば、急に忙しなく読んでいた書を閉じて起き上がった。
せかせか壁に立てかけた槍を背負う音がしたので、はて馬の刻には何があったか頭を動かす。
城下の警鐘が鳴り、大抵の者が仕事を収め、そして――
風魔が任務の報告に来る時間。
ズバンッ!!
次の瞬間、縁側から風魔が飛び込む音と獲物が部屋から逃げ出す音はほぼ同時だった。
書から顔は上げなかったが、目の前を掠めた獲物と共に廊下へ消えた風魔の衣装の色合いは。
真っ青だった。
「…初めての藍染めにしては上出来だな。」
でしょー!と廊下の遥か彼方から元気な返事が返ってきた。
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