毛利元就 | ナノ


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年に二度行われる日輪祭が明日に迫った。
計画に基づいて準備は行われているため、特に問題事も起きずに日々は淡々と進んでいる。

特筆すべきことと言えば、山の獣達を一時追い払うため、罠にかかった山犬や猪を処理する手鞠がやたらと血塗れになる機会が増えた程度だ。

それで呑気に駆け寄ってくるのだから、この所は何枚小袖を新しく与えても足りない。



「じゃあ元就様、湯殿行ってくるね」

「…正午には戻れ。日輪へ祈りを捧げる」

「はーい」



手鞠の仕事というものも、形になってきた。
自分が日輪へ祈祷している際の人払い。
八つ時に食すための餅をつく係。
御堂にこもっている時の見張り。
よほど特別な仕事を与えない限りは、この仕事を堂々巡りでこなしていた。

現在の安芸は近隣諸国の統治も終わり、豊臣との諍いも一旦落ち着いている。
ようやく煩わしいものがいっぺんに片付いたと、長く息を吐いた直後。

嫌な事を思い出して目を手で覆った。

こんな事があるから蔵に篭っていた方が心の安定に良いのだ。
浜辺を歩いていた足の遥か先には、小さな焚き火が微かに煙を上げていた。
その火の前であぐらをかいていた男がこちらを見つけて、大きく手を振る。
全てが元に戻った安芸で、唯一起きてしまった変化。


「お、毛利ぃ!邪魔してるぜ!」



鬼ヶ島の鬼気取りが、なぜか住み着くようになったのだ。




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