仔どもばなし | ナノ






ページのほとんどがオレンジ色で書かれたノートと羊が朝からにらめっこをしていた。
まだ幼さの残る左手には牛乳パック、右手はノートと赤いシートを器用に持っている。

目の前の朝食に手をつける様子が無いので近くにいたスクアーロが声をかけた。



「そういや今日お前の学部テストかぁ。エネルギー切れるから飯は食ってけよぉ」

「あーありがとうスッ君。じゃあ一つお願いしていい?」

「何だぁ?」

「さっきから私の後ろでチェスを強いるザン君を引き離してほしい」










星と森の童話











ボンゴレ本部に隣接している小さめの屋敷は内部で「別館」と呼ばれている。
文字通り巨大なアジトであるボンゴレ本部とは作りの違う「別館」で、主に大勢の来客が来たときのために作られたもの。

しかしアジトに入りきらない来客などめったに来るわけがなく、実際は九代目の嫡男の部屋代わりとなっていた。

いくら小さめとは言え一般人からすればかなりの邸宅。
そこにはザンザスと学友のスクアーロ、加えて昨日はテスト前なので羊も泊まりに来ていた。



「えーとここで+が−になるからー…」

「おい、学校行く前にチェスするぞ」

「ごめんザン君、私今日テストなの」

「するぞ」

「あれ、これの回路いらないっけ…」

ガタガタガタ

「ザン君無言で椅子を揺らさないで」



普段は何につけてもザン君ザン君と相手をしている羊もどうやらこの日は違うらしい。
メリメリと羊の椅子を引き剥がしそうなザンザスを仕方なくスクアーロが抑える。



「今はやめとけぇザンザス。こいつ勉強になると一点集中だからなぁ」


自分のチェスの弱さは知っているのでそれくらいしか言えないスクアーロ。
普段よく笑っている羊の真剣そうな顔を理解したのか、堪えてやるようだった。



「それより問題はよぉ羊。時間じゃねぇか?」

「時間?…………うおわああ遅刻!遅刻するー!」



羊が鞄を抱えてスクアーロがザンザスを引っ張り、嵐のように部屋を飛び出した。
男二人にとって遅刻は大した問題ではないが、今日がテストである羊にとっては死活問題だ。
超ダッシュで屋敷を出て、隣接したアジトの前にいる九代目に会いに行く。



「おや、今日は遅いね」

「うんちょっとね。行ってきますおじいちゃん!」

「行ってくるぜぇ」

「………」

「ザン君も行ってきますだって!」

「聞こえたよ。気をつけて行っておいで」



走りながら手を振ってリムジンに飛び乗った。
とりあえず乗ってしまえば後は運転手次第なので心を落ち着かせる。


 


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