やれやれ、という感じで息を吐きながら名無しが悪魔の携帯をポケットにしまった。
次の瞬間。
ウーッ ウーッ
「うわ」ってオイラ達五人でハモっちまった。
「ま、またあいつから電話なのか?」
「…いや、メールだった。」
「何だよ弟、びっくりさせんー」
「『今すぐ来てね、じゃないと行くよ♪』だって。」
「うわあ…」って今度は四人でハモった。
オイラはこの白蘭の呼び出しを兄貴達の中でなんて呼ばれてるか知ってる。
『オツトメ』だ。
一日のどこかで必ず名無しはこのオツトメを果たさなきゃならない。
何でなのかはオイラは知らない。
「生きて帰れよ弟。」
「隙見てホワイトスペル乗っ取ってきても許すぜ、俺ら。」
「あいつの弱点は鳩尾だからな。」
「全人類の弱点を言われても。」
じゃあ、と兄貴達に求められたらハイタッチに答え(意味は分かってないらしい)、名無しが立ち上がった。
帰ってくるのはきっと、きっかり二時間後に違いない。
名無しがオイラ達に馴染んだのは他の仲間がいう「タンタンとしてる」とか、「ちゃんと強い」とかそれだけじゃないんだと思う。
多分白蘭は名無しを好きで、名無しは白蘭が嫌いだから、だと思う。
オイラはガキガキ言われるけど、これくらいなら分かる。
だから。
「なー名無し。」
「ん?」
「名無しはオイラ達のこと好きか?」
名無しが「オツトメ」に行くときは、いつもこれを聞きたくなる。
好きなもんがなかったら、嫌いなもんにはきっと勝てないと思うから。
「……好きだよ。」
尋ねればいつもそう言ってオイラの頭を撫でる。
少し不思議そうに、そしてものすごく言い慣れてない感じで。
やだ照れちゃう、と他の兄貴が茶化すのはお決まりだけど。
「へへ、気をつけて行けよなー。」
「うん。」
そうして名無しは扉の向こうへ消えて行った。
白蘭からいらないものを受け取りに。
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