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「何名無しに媚び売ってんのよー!!」



見れば向こうは向こうで別のブラックスペルの隊員がエリツィンを羽交い締めにしてどうどうとなだめていた。
興奮しきったその手にあるビリヤードのキューが風を切る勢いで振り回されていたので、取り押さえた理由に納得する。



「弟、とりあえずそいつどっか連れて行ってくれよ。
顔会わせない方がいいだろ。」

「ちょっと!
あんた名無しに色仕掛けしたらぶっ飛ばすからねー!」

「お前弟の性別なんだと思ってんだ。」

「いや弟って呼んでる俺らが言えたことじゃねえよ。」



そう言われなくとも胸元に飛び込んできた存在はしっかりしがみついたままなので、三人組の兄貴分達へうなずいて見せてからその部屋を立ち去った。
取り巻きにしては珍しく、ほとんど肌を出さない服を着ていることに物珍しさを感じた。

とりあえず厨房にでも連れて行き、太猿が来たら引き渡そうか、と廊下に出た辺りで。





背後から喉元に冷たい物を押し付けられた。





肩を抱いて連れていた相手はいつの間にか後ろに周り、自分の関節を後ろから押さえ込んでいた。
そして喉元のこれは、恐らく、刃物だった。

一瞬混乱しかけた頭は、名無しの処理能力の速さ故にあっという間に醒めていく。
今の一瞬で殺らなかったのなら向こうに殺意はない。





「……誰。」

「わかんない?」

「………」



まさか、という単語が頭を巡る。
肌を露出していない服。
避けきれないような速さでの飛びつき。
一瞬だけちらりとみた、端正な顔立ちに。

はまる二つの緑の瞳。



まさか。








「……………ベル?」





呟いた瞬間、弾けたような笑い声と共にぐるんと体をそちらに向かされる。
長い金髪がこの上なく似合う、ビスクドールのような顔立ちが妖しく笑って、いつものように名無しの腕に抱きついた。





「当たり♪」




 


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