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――――――…



「俺はイタリア人か、って?」



戻ったアジトで野猿と書類整理をしながら、ふと今日の二時間を思い返してγに尋ねてみた。



「まあイタリア人の血が流れてるが。
それがどうかしたか?」

「白蘭に、イタリア人男は愛情表現が豊かだからと言われた。」

「はは、そりゃあ人によるだろうよ。
俺だって見境無く甘い言葉を囁いたりしないぜ、あくまで姫の騎士だからな。」



さらっと出た言葉に一層真実味が強くなる。
そう言えば目の前の存在は「女神が俺に微笑んだ」系の言葉を多用できる人間だった。



「女の側にもよるだろう。
こういった言葉が好きなのもいれば、太猿の取り巻きみたいに甘言無しで十分な奴もいる。」

「あー、太猿兄貴はあんまそういうの言わねーな。」



なるほど、と野猿と一緒に納得した。
そんな時ふと、今はエリツィンがいないことに気づく。
こちらが書類仕事をしているせいかとも考えたが、そこまで彼女に気を使われたことはなかった。

すると。





「もーあったまきた!
決闘よ決闘!ツラかしな!!」



隣の部屋で何かが割れたような音と共に、エリツィンの罵声が飛んできた。
それをはやし立てる指笛と声援も。



「まーたやってんのか太猿兄貴の女達。」



野猿がそう呟くほど彼女達の喧嘩が多いことは名無しも知っている。
半ばストリートファイトのようになってそれなりの娯楽になっていることも。

当の彼女達はかなり真剣なのだ。
そのため熱が入りすぎると拳だけでなく、武器としてその辺の酒瓶を持ち出したりと過激化してしまうこともたまにある。



「エリツィンか…」

「あの姉ちゃんも元気だよなー。」

「トラブルも多いがな。」



うん、と頷いて書類を一旦机に置き、ソファーから立ち上がった。





「…止めてくる。」

「え、マジで?」

「この間マニキュアの瓶握って相手殴ってたから。」

「殺傷もんじゃねえか。」



確か昼下がりに会った時、気に入らない新人がいると言っていた時の感情を今爆発させているのだろう。
良くも悪くも直情型のその性格をどこか懐かしく思いながらも、隣の部屋に姿を見せた。




「……エリツィン、その辺に――」

「!」



瞬間、片方の女が自分の胸元に飛び込んできた。
とっさにその肩をおさえたが、長い金色の髪がエリツィンではないことを顕著に教えてくれている。



 


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