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「んでこいつが向こうの映像なんだがー」

「あ、今携帯の着信音消す。」

「お、やっと忘れず持ってきたな。
まあ消さなくてもいいぜ、堅い会議じゃあるまいし。」

「いや、後々大変なことになるから。」

「?」




名無しがそう言ってから三十分後。




「で、この地域が…」



ウーッ ウーッ



「ああこいつらは放置しても問題は…」



ウーッ ウーッ



「…………」



すげえ。
名無しの携帯が鳴り止まなすぎる。

座ってるオイラと名無しの間にある携帯を呆然と眺めていると、名無しが隣で息を吐いた。
時計は正午を回っていた。



「そりゃ毎日携帯忘れたくもなるな…」

「…ごめん。」



これ以上震えたら壊れるんじゃないかってくらい震える携帯。



「これどれくらい鳴り続けるんだ?」

「放っておけばそれだけ。
かけても出ないっていうのを向こうに教えたくて出ないんだけど…」

「向こうの総大将には効いてねえなあ…」



とりあえず緊急策として震え続ける携帯の上にクッションを二つ重ねて、その上からオイラが乗っかることで音を消してみた。

そうして一時間くらい話し終わった後に名無しが仕方なく電話に出て、やっとこ振動は治まった。







「へえー、んなことがあったのか。」



任務から帰ってきた三人組の別の兄貴達に今日のことを伝えると、 ただいまの挨拶代わりにヘッドロックをかけながら答えられた。
隣では名無しが別の仲間にスリーパーホールドをかけられて苦しそうにしていた。



「あの白野郎は俺達の弟にぞっこんだな。」

「その言い方だとよけいに変態くせえだろ。」



名無しはこの三人組の兄貴達とか、何人かの仲間から弟と呼ばれてる。
別に名無しを男扱いしてるわけじゃなくて、女がここに来ると分かった時にうまくやれるかどうか不安がった兄貴達が親しみを持つために呼び始めたあだ名だ。

名無しはブラックスペルでオイラの次に若いから、オイラと名無しは兄貴達から見るといつまでも「弟」だ。
ガキ扱いは嫌なのに。


名無しは何とか意識が跳ぶ前にスリーパーホールドから抜け出たけど、オイラは無理そうなんでギブをした。





「そんなら電源切っちまえよ。」

「それがよー、名無しの携帯電源切れねえように改造されてるらしいんだ。
着信拒否の設定もねえって。」

「ご愁傷様だな…」

「どうも。」


 


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