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名無しは感情をストレートに表す人間が好きだった。
自分も父親も上手く言葉で感情を示せない性質だったせいか、そういったことが上手い、或いは気にしない性質の人間を見るのが好きだった。

例えそのストレートさが、「無神経」や「生意気」と呼ばれる物だったとしても、名無しから見れば立派な評価で。
それ故に、この日白蘭にこんな質問をされて戸惑うことになる。





「名無しチャンってどんな人が好きなの?」





押し黙ると無視した回数にカウントされてしまうので、悩んでいる振りをした。
いや実際悩んでいる。

その答えである「ストレートに感情を伝える人間」というものが、目の前の存在に当てはまりすぎているから。

それでも白蘭に好感を持っている訳ではない。
その矛盾が上手く説明出来なかった。





「……強い人、とか。」



ふと、とっさに呟いた言葉に自分が驚いた。
けれどその驚きを悟られないよう必死に隠した。



「強い人?」

「……そう。」

「ザンザス君みたいな?」



突かれたくない所を的確に突くその性格に口中に苦い味が広がった。
強い、と言って真っ先に浮かんだのが自分の父親であることは決しておかしいことではないはずなのに。



「ねえ名無しチャン、僕が世界で一番強くなったら僕のこと好きになってくれる?」

「さあ。」

「世界の半分を君にあげるよ。」

「いらない。」

「僕も名無しチャンのいない世界はいらない。」

「…なんでそう、歯の浮くような台詞が言えるの?」

「事実を言うのに恥じらいなんて必要ないでしょ?
あとはあれかな、僕ってイタリア人の血も入ってるし。」



イタリア人男は愛情表現豊かって言うでしょ、と白蘭が当たり前に述べるので、本当にそうだろうかと今一度考え直してみた。



(…私の身近なイタリア人男は……やっぱり父さんか)






(おい)

(何?)

ゴンッ!

(った…!
何で殴…あ、床に銃のパーツ落としてた…)

(……)

(…口で言って、父さん…)






「……いやそれはないと思う。」

「えーそう?
イタリアとフランスは結構有名だよ。」

「んー…」



例が悪かったか、と別のパターンを考えてみることにした。



 


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