「僕らはもう少しだけ大きくなりたいんだ。」
ここのところ父さんの所を訪れるこの白い人間は、そう告げながら微笑んだ。
「だからボンゴレ君にはその間だけ、大人しくしていてほしいんだよね。
九代目が亡くなったばかりのこの節目に、新進気鋭の僕らに抗争起こされるのは、さすがにキツいでしょ?」
さあ、と返して裏庭を眺める作業に戻った。
庭師が造園の手入れをしている。
白い人間はニコニコと隣に並んで座っていて、ここまで話して良いのかという内容を話している。
「脅すの。」
「んーん、お願い。
ちょっと断ることは許さないけど。」
「全てはボスが決めること。」
「うん、知ってる。」
だからこれはただのお知らせ、と言って、いつものように小さな袋に入ったマシュマロを渡してきた。
薄ピンクの色をして、赤いリボンのかかったそれを。
そうして悔やむように、謝るように、それでもどこか喜ぶように、小さく笑った。
私はこの笑顔をどこかで見たことがあるような気がした。
「言葉が足りないんだ。」
ああそうだ、確か、鏡だ。
「或いは多すぎるのかもしれない。」
いつかふと見た、私を映す水たまり。
「君に伝えたいことがこんなにあるのに。」
笑ってしまった私を映した水たまり。
「どうしたら、いいんだろう。」
ああそうだ。
これの笑顔は、私に似ている。
その日またこの人間が父さんとの話し合いに出向いて。
それから長い長い時間、どちらも出てくることは無かった。
戻る