「何とか寝ちまおうと思う…」
「うん。」
とは言っても野猿が手を離す気配は無いし、万が一寝てる間に吐けば死にかねない。
また、こういう時は野猿相手にどうするのが最適なのか分からなくなる。
一番正しい答えなどないと知っているのに。
考えるしかないとγは言った。
どうすれば良いのか考えて、次に本能に任せるしかないと。
「…野猿、もう少し奥で寝て。」
「う、ん。」
もう半分意識は無いけれど、どうにか体をずらす所まではしてくれた。
その隣に並んで横になる。
とりあえず近くにいれば異変が起きても気づけるだろうと思った。
「…名無しー…」
「うん。」
いいから、と頭を撫でると、そのまま眠りに落ちていった。
誰かと寝ることの久しぶり具合を実感しながら、自分もまぶたを下ろして眠りについた。
どれだけ時間が経ったのか、微かに意識が覚醒した時間があったけれど、まぶたに光を感じないのでまだ夜中だと分かる。
寝返りをうつと首元に柔らかい毛先が触れた。
野猿は思いの外近くで眠っていたらしい。
ぼんやりとした、今にも眠りの淵に戻っていきそうな意識の中で、野猿は無事だろうかという考えがどうにか引っかかる。
するりと首元に埋まる頭に手を回すと、その柔らかな感触に頬を当てて瞳を閉じた。
きちんと呼吸が聞こえた。
大きな心音も。
触れている部分はそこしかないのに、なぜだかひどく、暖かかった。
朝、目を覚ますと野猿はきちんと隣で眠っていて、大して悪い顔色もしていなかった。
ただ起こした時にすぐさま頭を押さえたので、例の頭痛は回避できなかったようだ。
「うー…頭いて。
名無し、俺寝てるとき蹴ったりしなかったか?」
「いや全然。」
「ならいーけど…まあオイラは壁の方向いて寝る癖あるし、寝相は大丈夫だったと思う。」
「ん?」
昨日の自分が寝た位置と、夜中に少し目を覚ました時の向きを思い出してみる。
野猿の癖が本当なら自分達は背を向け合って眠っていたはずで。
「……夢でも見たかな。」
「んー?」
「何でもない。」
行こう、と言うと、しょあ!と伸びて笑った。
そして頭痛に襲われていた。
(名無しチャンおはよう!)
(…………………顔が赤いのは何で?)
(気のせいだよ!)
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