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「時々すっげえ辛いのとか苦いの混ざってんだよな…甘そうなのよけとこうぜ。」

「甘そうなの……はどこで判断する物?」

「っんー、なんつーかこう、何となく!」

「分かった。。
……あ。」



菓子の山をかきわけてた名無しの手がゆっくり止まった。
その手には小さな袋。
薄ピンクのマシュマロが入ってて、赤いリボンがかけられてる。



「それがどうかしたか?」

「いや。
……これは多分甘い。」

「あー確かにぽいな。
じゃあこれも。」



しばらく仕分け作業をしてると、そのうち名無しが静かに自分の時計を確認した。





「野猿、時間はいいの。」

「時間?」

「…そろそろγ達が帰ってくるんじゃ。」

「!!」



ガバッと立ち上がって思いっきり叫ぶ。
アジトの鍵はかけっぱなしだ。
兄貴達は鍵くらいもってるだろうけど、こんなに長くアジトを空っぽにしてたなんてバレたら拳骨くらいで済むかどうか。



「やっべ名無し!走るぞ!」



慌てて名無しの手を引いて走り出した。
頭の中で100回くらいまだ兄貴達が帰ってませんようにって祈ったけど、廊下の先にあるアジトの扉はすでにちょっと開いていた。

終わったーー!





「悪いγ兄貴!
次からはちゃんとアジトに―――」

「「「くたばれええええ!!」」」

パァンパァンパァン!

「うぉおおおお!?」



入ったと同時に鳴りまくった破裂音に、ガチで撃たれたと感じた体がビクついた。
思わず目を閉じちまったけど体には全然痛みが来ないから、目をパチパチしてると背後でもう一発パァン!と音がして背中が跳ねた。

慌てて振り返ると、名無しがクラッカーを持って立っていた。
あ、今の銃声じゃなくてクラッカーかよ…。



「タイミングズレすぎだろ弟!」

「油断した。」

「野猿が入った直後に鳴らす予定だったろ!」

「くたばれとか言ってたから油断した。」

「あ!
こいつ言い返すようになってきやがった!」

「え、ちょ……は?」



三人組の兄貴達と揉めてる最中、事態についていけてないオイラへ名無しがカウンターの向こうを指差した。
そこには他の兄貴達が勢揃いしていて。

テーブルも壁もめちゃくちゃ飾り付けられていた。





「来たか野猿。」

「γ兄貴……」

「2年前にジェッソファミリーと統一されてからずっと慌ただしかったからな、お前の誕生日もすっぽかしちまった。
今年はその分も盛大にやろうと決めてたんだ。」



名無しにも協力してもらった、というから振り向くと、無言でうなずかれた。
本当は今日兄貴達に仕事は無くて、オイラ達が外に出てる間に準備をしていたって。

名無しがサプライズ向きの人間だって今日初めて知った。





「が、ガチで?
超喜んでいいのか?」

「そう思わせて悪かったな。
ああいいぞ。」

「おい野猿!
今日は最初っから酔っぱらうんじゃねえぞ!」

「肉もしこたま買ってきたからな!」

「お、おー!!」





そっからかなりのどんちゃん騒ぎが始まった。
本当に肉も料理も酒も山ほど用意してあって、撫でられたり投げられたりで髪がわしゃわしゃになった。

……こういう時は、ガキ扱いもいいかって思った。



 


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