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「よっ……いしょ!」



ほとんど体当たりでオイラの部屋の扉をぶち破って、なんとか床の真ん中に袋を下ろした。
すげえ、ちょっと腕の感覚なくなってる。

アジトに戻る前に一旦置いた方が良いって名無しの意見と、すぐにでも中が見たいっていうオイラの意見が一致したからまずここに来た。



「やっぱすげー量だなー。」



そう言いながらニヤニヤが止まんない。
袋を倒してひっくり返してみると、雪崩みたいに中から超カラフルな菓子が流れ出てきた。
向かいで名無しも同じことをやったからオイラ達の周りは色の海みたいになった。



「うわすっげえ!
え、マジどれから食おうかなー!」



てか見たことないのが多すぎて迷うどころの話じゃない。
名無しも座った膝まで浸食してきた菓子を色々眺めてるから、オイラもそうすることにした。

……食べると煙が出る飴って何なんだろ、それは楽しいのか?





「…誕生日ってさ、何もしなけりゃ他の日と変わりないじゃん。
そうやって過ごしてる奴もたくさんいるんだろ。」

「多分。」



水素ガムって何だろう、と手元の菓子を見ながら呟く名無し。





「じゃあ無くても、いいもんなんかな。
自分だけが知っててもしょうがねーし。」

「でも自分じゃ分からないから。」



え?と名無しを見ると、まだ水素ガムとやらの成分表を見ていた。





「誕生日は誰かに教えてもらわないと分からないから。」

「う、ん。」

「野猿が生まれた。
それを誰かが知ってた。」





「こんなに良いことは無いと思う。」





だから誕生日は大事だと、名無しがそう言ったわけではないけど。
手元の菓子を見ながらどうしてそんな台詞をあっさり言えるのかとこっちが照れくさくなった。



「名無しって口重いくせにそういうのあっさり言うよな……」

「?
ごめん。」

「いや謝る必要はねえの!」



そういやオイラは名無しの誕生日を知らないから聞いてみたら、まだずいぶん先だった。
白蘭も知らないから秘密にしておいてほしいと言われ、なんかちょっとあいつ相手にしてやったような気がした。



「オイラ、名無しの誕生日はめっちゃ祝ってやるからな!」

「ありがとう。」



それから一日に食っていい菓子は何個までにするかだとか、馬鹿みてえに賞味期間が長いからまず腐らないだとか、この量をどこに隠すかとかを話し合ってた。
一番の問題はどれがどんな味かさっぱり分からないとこだけど。



 


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