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――――――…



鍵を預かりに来たオイラに、γアニキは「またあそこに行くのか」って笑った。
オイラがアジトの外をうろつくのにそれ以外の理由はあんまり無いし、これが日課だってのはもう皆知ってる。





「鍵は?」

「んー、問題なし。」



名無しの言葉に試しにガチャガチャとアジトの扉を引っ張って、ちゃんとかかってるかを確認する。
アニキ達は他に一人残らず仕事や用事に出たから、夜まではオイラ達以外誰もいない。

なら外に行きたいと言えば名無しはいつものように了承してくれた。



「名無し、どっか行きたいとことかねーの?」

「いや、まだ良く把握してないから野猿に合わせる。」

「じゃあ菓子屋!」



名無しもほとんど予想通りだったらしくうなずいて、袖を引っ張るオイラをなだめながら歩き出す。
そうして白い廊下を目的地の方向へ折れた時。





「名無しチャン!」



飛びついてきたあの白い色が視界を掠めたら、名無しはほとんど反射的にオイラを自分から引き離していた。
代わりに名無しの腰には二の腕、背中と首筋には別の体が勢い良く密着するはめになった。



「おはよう名無しチャン、今日も部屋に閉じ込めたいくらい大好きなんだけど僕はどうすればいいと思う?」

「…ねえいつもどこから出てくるの。」

「名無しチャンが存在する空間は全部僕のフィールドだよ。」

「ああ、守備範囲が広い。」

「名無しチャン誤解を招く言い方やめて!
僕のそういう意味での守備範囲は激狭だよ、名無しチャン一人分しか空いてないんだから!」



そんな隙間は埋めといてほしいという顔を名無しが切にしたにも関わらず、今はγも他の隊員もいないので離れていてと無言でオイラに伝えた。
そもそもこいつの視界にこっちは入っていないだろうしそこは大丈夫だけど。





「…で、今日は何。」

「んー、僕今日はずっといないから次に会えるのは夜中だなあって思って今会いに来たんだ♪」

「夜中?」

「僕は名無しチャンをおはようからおやすみまで見つめるのがモットーだからね。」



どういう方法で見つめてるか知りたい?と聞かれてきっぱり断っていた。
白蘭が丸一日アジトにいないのは意外と珍しくなくて、そこは流石に二つのマフィアのボスだよなと思う。



でも今日はもうこれ以上は来ないんだな、散歩中に名無しが「オツトメ」に呼ばれたらどうしようかと思ってたから良いことかもな。


それからどうにかまた正一が追いついて、ニッコニコの本人を引っ張って行ってくれた。





「…今日は遭遇早かったな名無し。」

「うん。
でもこれで安心した。」

「ん?何が?」

「いやこっちの話。」



 


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