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そんな呪詛を呟きながら奥歯を噛みしめていた時、三人組の一人がある者を見つけた。
それをこっそりちょいちょいと指差せば、他の二人も納得したようにうなずく。



「おい野猿、お前は名ピッチャーだったろ。
この俺から一点も取らせなかった奴だからな。」

「え、は?」



むっつり黙り込んでいた野猿の隣へ座り、肩を揺さぶって無理やりこちらを向かせる。



「良く聞け、今はツーアウト満塁、スリーボールにファールの連続の超正念場だ。
ここで男なら分かるな、カーブでもねえ、フォークでもねえ、そうストライクだ!」

「ちょ、ちょ、何だよ何言って――」

「良く狙え、神のミットはあいつの口だ。」

「超軟式球だ、握りつぶすんじゃねえぞ。」

「はあ!?
いやこれって卵焼きだろ!?」

「『たま』と『たまご』、何だ同じじゃねえか!」

「おら男になれ野猿!
行くぜ3、2、1……投げろ!!」

「だああ知らねえからなああー!」





半ば強制的に立ち上がって、グロの視線がこちらへ向いたのと同時に思い切り腕を振り下ろした。
弾道は逸れることなくまっすぐ標的へ向かい、γが外野に「うるせえぞ」と振り向いた瞬間。



「もっがぁ!」

「!?」



見事に口の中へ黄色い弾丸がどストライクした。
それと野猿達とを交互に見てようやくγが状況を把握した頃には、すでにグロが叫んでいた。



「なっ、なんっ、なんーだこれは!
私に何を…っぐああああ!
水をよこせえええ!」

「俺らのところはいかがわしいんでな、酒しかねえよ。」

「くっ……」



今に見ていろといったニュアンスの言葉を吐きつつも、別の物を吐きそうなのか胸を押さえて部屋から走り出して行った。



「っしゃあ勝ち越しぃ!」


「ふーう!」

「お前らな……」



γが手を叩き合う隊員達をいさめるべきか逡巡したが、結局は見逃すことにした。
自分も少し笑ってしまっていたからだ。

名無しが戻って来たときには野猿が胴上げ代わりにあちこち投げ飛ばされていたのでさぞ理解に苦しんだろう。



「…γ、遅かった?」

「ああ名無し、向こうが急用を思い出したらしい。
取りに行かせたところ悪いな。」

「いや。
……ああ、誰か卵焼き食べたんだ。」

「俺達のノルマは終わったぜ弟。」

「残り頑張れよー。」

「あと2本か……」





 


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