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「ああ失礼、このガキには少々ここまでの道のりを聞いたまでだ。
そのような趣味はない。」

「…当然だ。
名無し、野猿を連れてこっちへ来い。」


「ん?名無し…名無し……ほう!
これが!」



ずずいっと身を乗り出したグロに一歩下がった名無しへ、それでも尚目玉を動かすことをやめない。



「なる程なかなか…黒か、ふむ…対と言えば対だな……」

「っ名無しに何かすんじゃねーよ!!」



食ってかかった野猿の頭を、およそ生き物に対する気持ちなど欠片も無いような動きでわしづかんだグロへ、咄嗟にその手を振りほどいて野猿をこちらへ引き寄せていた。

その瞬間だけ微かに嫌悪の表情が見て取れたが、限りなく名無しへ顔を近づけるとまた口の端を緩やかに引き上げて笑う。





「お前には手出しをするなと白蘭に言われているからな。
お前には。」



ではこれには何かしたのか、と動きそうな口をどうにか抑えている間に、自分と野猿の肩ごとγがそこから引き離した。



「わざわざ来たからには俺に用があるんだろうな?」

「ああ、次のこちらの任務に必要な人員のリストがブラックスペルの方に紛れていると聞いてな。
お前達に自首を勧めに来た。」

「ほざいてろ。
…名無し、俺の部屋の机にある、取ってきてくれ。
野猿は下がってろ。」

「分かった。」



名無しがまだ何かを堪えている様子の野猿を連れて離れ、遠巻きに見ていた三人組へ託す。



「あれに何か言われたの、野猿。」

「…何も言われてねーし、聞かれてねーよ。
アジトの近くをうろついてたら、この場所まで案内させられただけだ。」



視線も合わせず語尾も消えそうだったけれど、とりあえず頷いておく。
その頭をくしゃりと撫でてから自分の言われたことをやりに隣の部屋へ消えた。

どっかりソファーへ座り込む野猿へ、くわえた煙草を置いて兄貴分の隊員が声を潜めながら尋ねた。





「…おい野猿、本当は何言われたんだ。」

「……何も、言われてねーよ。」

「んなぶすくれた顔じゃ説得力の欠片もねーな。」



顔を上げてソファーの向こうに立つグロへ視線を向ける。
相変わらずとも言える質の悪い言葉をまだγへ浴びせているらしい。



「けっ、でけぇ口で大笑いしやがって。
さっさと帰れ。」

「俺らが何かいい方法でも思いつける頭ならなあ…」



 


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