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「一般人には難度が高いような…」

「そう?
名無しチャンは食べてくれてるよ。」

「はい!?」



指し示された方を見ると、いつの間にか名無しが目の前で平然とこの黄色い物体をモグモグしていた。
強制されたのだろうが食べている物に関してはさして嫌そうには見えない。





「…名無しさん、美味しいですか?」

「…まあ、普通。」

「普通ですか…」

「好き嫌いは無いから。」

「いえそういう問題ではなくてですね…」



よもやもう一人までバカ舌だったとは。
もくもくと玉子焼きもどきを咀嚼する名無しへ嬉しそうにまとわりつく白蘭を見て、基本的なところはお似合なのになあと肩を落とす正一がいた。



「五本くらい焼いたからまだまだあるよ。
正チャンおかわりいる?」

「断じて結構です。」







――――――…



ブラックスペルアジト



「γ、今戻った。」

「おう名無し、お務めご苦労さん。
…んだその卵焼きの山。
白蘭に焼かされたのか?」

「……その逆かな。」

「また厄介なもん持たされたなあ…」



苦笑するγに首肯しつつ、まだ三本の卵焼きが乗る皿を片手に部屋のソファーへ腰を下ろした。
ふと辺りを見渡すと、いつもならもう目にしている存在がいない。
大抵はこのソファーの群れか、背の高いビリヤード台にへばりついているのに。



「お、戻ったのか弟。
白野郎は元気だったか?」

「ああ、ただ今。
普段と何も変わらなかったよ。」



そいつは不幸だ、とカラカラ笑う三人組の兄貴分と話していると、太猿の周りで戯れるのにあぶれた女の一人が名無しの膝に滑り込んできた。



「ずざー、名無しおっかえりー。
あ、何これ!超おいしそー!」

「いやエリツィン、それは…」

「おー弟の卵焼き久しぶりだなあ。」

「最近の卵焼き担当は俺らだもんな。」

「どうせあの野郎に大量に焼かされたんだろ、食おうぜ食おうぜ。」



こういう時は手際良くどこかからナイフを取り出し、さっさと一本を適当に切り分けた。



「食っていいんだろ?弟。」

「……………………じゃあその一本はそっちに任せる。」

「おう、任せ尽くせ。」

「俺このでっかいのな。」

「それ取んじゃねーよ。」

「いっただっきまー――」



す、の言葉と同時に各々が口を閉じた瞬間。





地獄絵図と化した。




 


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