「もちろん、僕は読めるものだと思うよ。
読むと言うより分かるだよね。
皆どこかで分かって欲しがる子ばっかりだからその点は簡単かな。」
「そう。」
「名無しチャンはびっくりするくらい分かって欲しがらないけど。」
クスクス、と声に出す。
これと二時間向かい合うようになって、確実に自分は知っている笑い方の表現方法が数十ほど増えた。
「…知りたいものじゃ無いだろうに。」
「うん、だから普段は知ろうとしないよ。
そんなのどうだっていいもんね。
でも分かっちゃう人、っているからさ。」
その言葉に顔を上げると、組んだ指の上に乗せている白蘭の笑顔が微かに変化していた。
これはなんという笑い方だったろう、笑っているのに、どこか歪んで。
「いつになるかな…でもきっといつか、名無しチャンに上手く話せる時が来ると思う。
すっかり何もかもを君に伝えられる言葉が見つかる時が。」
だからそれまでいなくならないで。
その言葉に思い出す。
ああ、これは泣き笑いだったと。
「あ!
名無しチャンいっつもブラックスペルの隊服ばかりだから、たまにはと思って私服を用意してみたんだよね。お出かけ用からパジャマまで揃えてあるから今から着てみよっか♪」
正一来い!早く来い!と念じた内容が通じたのか、この直後に飛び込んで来た正一のおかげでファッションショーは回避された。
が、戻った自室に見慣れないパジャマが置いてあった。
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