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「名無しチャーン!」

「わ、」



異次元から飛び出したかのようにいきなり現れた白蘭の抱きつきに、慌ててフライパンから箸を離す。
危うく卵焼きが炒り卵になるのは避けられた。



「あぶ…」

「名無しチャンがエプロン着ちゃってる!可愛い!
ついに僕のお嫁さんになってくれるんだね!」

「違う。」

「照れなくても良いよ、僕ちゃんと夜になると豹変する良い旦那さんになるからさ!」

「良い旦那の基準をすごく聞きたい。」



エプロンの何がハマったのか、火を扱っているのに後ろから抱きついて離れない。
大敵の登場に周りにいた隊員が一気に後ずさったが気にもしていないらしい。

思うように手が動かずわずらわしがっている名無しを見かね、野猿が白蘭をグイグイ引っ張った。



「よせよ白蘭、名無し仕事中なんだぞ。」

「僕も名無しチャンを愛する仕事に熱中してるから邪魔しないでよ野猿君。」

「何だそれ!
ってか何でお前ここに来たんだよ!」

「何か良い匂いがしたから。」



犬!?とこの場にいる全員が思った。



「というのは冗談で、γ君に用があったから名無しチャンに合うついでに直接来てみたんだよね。
そしたら名無しチャンエプロン着てるし料理してるしで、正直γ君どうでもいいや。」


「…何か騒がしいと思ったら、俺の話か?」

「あ、γ君そっちにい……………………γ君って割烹着似合うね。」

「そりゃどうも。
ちなみに隣の部屋は興味本意で裸エプロンやってる野郎共がいるが、見るか?」

「ええー…そんなの見ても誰も幸せにならないよ。
って名無しチャンっていう女の子がいるのに何でそんなことしてるの?」

「ああ、名無しは気にしねえからな。」

「いや名無しチャンのそういう大物ぶりはすごく好きだけど、絵面的に考えようよ!」

「白蘭。」

「何々?」

「卵焼き一つ食べていいから帰って。」




かくして平和が戻った。




「嵐みてえだったな…白蘭ハリケーン。」

「卵焼き一本ごと持っていかれた…。」

「卵二個で追っ払えたんだから安いと思え。」

「お、名無し。
俺たちの裸エプロンどうよ。」

「…ああ、正面からだと意外とまともなんだ。」

「後ろ姿が残念だけどな。
慣れちまうと案外これでどこにでも行けそうな気になるぜ。」

「いやそれはどうだろう。」



どこか誇らしげな三人組に今だけは弟扱いをされたくないと心から思った。


 


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