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「名無しチャン50回に一回くらいは出てくれるんだけど、時間かかっちゃうからさー。
僕の代わりにずっと名無しチャンを呼んでくれる夢のような機能だよね。」



ええ、悪夢のような機能です。
口には出せませんが。
そんなとき、50回に達したのか呼び出し音しか流していなかった携帯からブツッと音が聞こえました。



『…はあ…もしもし。』

「もしもし名無しチャン♪
僕だよーびっくりした?」



まずため息から電話に出る名無しさん。
そんなことお構い無しにこの上なく嬉しそうな白蘭さん。



『いや画面に名前出るし。』

「わーい、名無しチャン僕の番号登録してくれてるんだ。」

『朝起きたら勝手に入っていたんだけど私が単に忘れてるだけなのかな。』

「うん、名無しチャン忘れちゃってるんだよきっと。
『愛しの愛しの白蘭』って登録されてたでしょ?」

『いや、『白い人』で登録されてる。』

「えええ何で変えちゃうのさ名無しチャン!
せめて『白い恋人』くらいにしてよ!」

『無性に電話を切りたい。』

「残念だね、名無しチャンの携帯は自分から電源を切れないように改造済みだよ。」

『…ああ野猿、そこのバケツ持ってきて。
水入ってるやつ。』

「水没!?
そこまでして切りたいの!?」



はい白蘭さん、休憩時間終わりましたよ。
とフォローを入れてみます。
するとそれを聞き取った向こうの名無しさんにも促されたせいか、携帯を水没されそうになってるせいか、わりと早めに切り上げました。



「名無しチャンはつれないなー…」



休憩時間も話せて良かったじゃないですか。



「うん、それはもう万々歳だよね♪
でもこの間は炎でメラメラのドロドロにされたから耐熱性にしたんだけど、水責めは想定外だったな。」



果たして何を言ったのでしょうこの人は。
あんな内容でも話せたことが嬉しいのか、上機嫌で会議室に戻る白蘭さん。
きっと切れた電話の向こうで、名無しさんも一息ついている頃でしょう。

白蘭さんは執着の強い人ですが、僕の経験上ここまでのレベルは見たことがありません。
朝も昼も夜も名無しさん名無しさん、一喜一憂、一挙手一投足に至るまで名無しさんといることが基準。


 


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