「お前かあああっ!!」



雛森君のその叫びを聞きながら、僕はなぜこうなってしまったのかをずっと考えていた。
でも、結局答えは出なかった。

市丸隊長の考えも、自分の気持ちも、すっかり分かったことなんて一度もなかった。












*自分が決めた人は信じぬく*













「やっほー、雛森ちゃん相手に斬魄刀抜いて拘置された過激なイヅー」

「…冷やかしならお断りだけど、名無し」






――三番隊特別拘禁牢


僕の現状は話の筋書き通り、何でか分からないけど定例集会に行ったら雛森君の悲鳴が聞こえてきて。
駆け付けた先で藍染隊長が死んでいた。

もちろん藍染隊長は市丸隊長と裏で何かを企んでいる人だから、本当に死んだかどうかは怪しかったけれど。
その後に雛森君が市丸隊長へ刀を向けるとは思わなかった。





「あのガキィンッ!ってギンさん守ったのはかっこよかったけど金庫刑かあ……」

「うるさいな、何で君が知ってるんだ」

「近くの屋根から見てました」



なら君も僕を止めてよ、と言いかけたけど無駄だからやめた。
今鉄格子の向こうに来ているのは現世の黒ずくめの服に大きなピエロを首からブラ下げた一見変な少女。
名前は名無しの名無し。

僕の(一応)部下だ。







「それで、何の用?差し入れもなしに」

「差し入れならあるよー、ほら」



チャラン、と音をたてながら名無しがファイ君の口から取り出したのは、数本の鍵。

まさかいや、まさかのまさかだと思うけど…







「今開けてあげるからね!」



まさかだった。



「嘘だろ名無し、そんなのどっから取ってきたんだ」

「盗ってきたってのが正しいよイヅ。さっきちょろっとね」



ちょろっと牢の鍵取られちゃ危ないだろう瀞霊廷。
まあ鍵開けてくれるみたいだし良いけど…



「よっし鍵開いたー、よいしょっ」



ガチャンッ



「…君は馬鹿か?」



へ?ととぼけた名無しの顔が横にある。
そう、真横。
僕の隣。



「何で君まで牢に入ってるんだ!鍵開けた所でやめておいてよ!」

「ああそうだった!しかもまた鍵かけちゃった!」

「だーもう!早く開けなって!」

「分かったってば今開け……ああ!うっかり牢の外に鍵投げちゃった!」

「マジでええ!?」














「…とまあこんな茶番をしてみたかったんだよね」

「今とてつもなく名無しを捻り殺したいよ」

「あとイヅに『マジで』って言わせてみたかった」

「おい…」





はあ、駄目だ名無しは。
市丸隊長がいないと止まるところを知らない。

今の状況は僕+名無しin牢。
加えて鍵は牢のはるか遠くに着地。


=邪魔ものが一人増えただけ。





「……神様は僕が嫌いなんだな」

「そーですね」

「うるさい」



落ち込んでも仕方がないだろうと、何とか自分を励ましてみた。
悪質な悪戯を市丸隊長に幾度となくされてきた経験から、僕の心臓は意外とタフだ。



「…で、どうして名無しはここにきたの?」

「や、話の流れ上私出る場所無いからさ」

「ああ、あれだろ。ジャンプ本誌の話の流れ上」

「そーそー」



そうかあ、出番がないからここに…悲しくない?



 

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