「イヅー!ファイ君の口に手ぇつっこんでよー!」
「物語の冒頭からそれかー!」
*説明書はよく読みましょう*
今日も三番隊の仕事部屋では。
机でちゃんと仕事をしているイヅ。
床で寝てるギンさん。
パズルをやってた私。
「…何?ファイ君がどうしたって?」
「ファイ君最近吸い込みが良くないんだよー」
私がプラプラと手に持ってるのはファイ君の腕。
ファイ君は大きなピエロの人形。
私と同じくらいの背があって、いつも背中にぶら下がってる意志のある人形。
その口には虚吸引機能が付いてる優れ物。
だけど最近そんなファイ君の唯一の特技が芳しくない。
虚だって障害物だって書類だって吸い込めたのに。
「名無し、今書類って言った?」
「い!?いいい言ってないよ。てか心読むなよイヅー、きめー」
「キモいまで言われる筋合いないよ。どおりで最近何か書類が減ってると思ったんだよね。書類一枚復元するのにどれだけ時間かかるか知ってるかな?」
おおお副隊長様の背後に炎が見えます。
赤じゃないね、青の炎だね。
青の炎の方が温度高いんだよ。
「イ、イヅごめん…ほら、ファイ君の腹話術で謝るから許して」
「どんなのさ」
スイッとファイ君の後頭部に手を入れて口をパクパクさせた。
「ゴメンヨイヅル君、僕ガ悪インダ、名無しチャンハ悪クナインダ。僕ガ勝手ニ書類ヲ吸ッチャッタカラ――」
「じゃあ名無しこの書類全部に判子押しよろしく」
「ええ!スルー!?ごめんってば!ほらファイ君もこの通り反省してますし!」
「顔に反省の色が見られないよ」
「顔色ってファイ君人形だよ!」
「じゃあ一心同体の名無しが代わりにやってあげないとね」
ううう!
「うわーん!ギンさんイヅがいじめるよー!」
と泣きながら床で寝ているギンさんの体へタックルさながら飛び付いた。
ぐおっとか悲鳴が聞こえたような気がしたけど気にしない。
「んあ…名無し?何泣いとんの?」
ようやく体を起こして私の頭を撫でる。
まだ完全には目が覚めていないご様子。
「市丸隊長、ファイ君が書類飲み込んじゃったんですよ」
「名無し、そのファイ君やけど…」
「ん?」
「…後ろで死んどるで」
「へ……ファイくううううん!?」
後ろでファイ君がグッタリしていた。
いつも何もしなくても私の首にしがみついて背中にぶら下がっていたファイ君が。
「嫌だー!ファイ君しっかりしてえ!」
「ぴくりともしとらんね」
「と言うより元から人形なんだから…元に戻ったんじゃ?」
「ファイ君を人形だなんて言わないで!!」
「おおおい!さっき自分で言ってたろ!」
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