ミーンミンミンミー…
大音量で響き渡る蝉の声が、今まさにレクイエムになろうとしていた。
「「あー……」」
*太陽に負けない*
ミーン ミーン…
激しく鳴く蝉とは正反対に、ぐったりと倒れているのは狐目の三番隊隊長と、ピエロを背負っている三番隊の隊員。
自分達の隊室へ戻ろうとしたが、途中で行き倒れたようだ。
「ギンさんー…」
「何やー…」
「暑いー…」
尸魂界の夏は、暑い。
へばっている二人を遠くから京楽と乱菊が発見した。
「倒れてるよ、あの二人」
「何も廊下の真ん中で転がらなくても良いじゃないの…」
「服が…暑い…」
「ああ…名無し現世の服やしな…」
名無しは現世から尸魂界に移り住んだ元人間の死神。
現世の名残を失いたくない、と言う理由で現世の服装着用を受け入れてもらえたのは良い。
しかし、浮かないために隊服と同じ黒ずくめを義務化されてしまったのは、暑かった。
「僕のも負けてへんよ…隊長服も着とるし」
「私は…背中にファイ君もいるもん…」
いつの間にかどっちが暑いか論争になりかけて。
暑いから終わった。
「コレ…働いたら真面目に死ぬわ…」
「確か…75…?」
「何やソレ…」
「熱中症で治療室に運ばれた隊員の数…」
「ホンマか…」
容赦ない日光を避ける力はありもせず。
刻々と体中から水分が抜けていく。
「このままやと75が77になるなー…」
「私達嫌われてるから別カウントだと思うよー…」
「別って何や…?」
「死亡者2…」
「…………」
「…………」
「ああ…誰も治療室はこんでくれへんから死ぬんやな…」
「そうそう…」
「まさかそれはあらへんやろー…」
「あはははー…」
「…………」
「…………」
「……可能性あるな…」
「…うん」
悲しい二人。
「どっか涼しいとこ移ろうよギンさん…廊下の真ん中って…」
「通る人皆またいでくしなー…」
「しかもギンさんの方が階級上だから、皆私をまたいでくんだよ…」
「正当な順位や…」
「「あー……」」
―三十分後
「名無しー…」
「…………」
「名無しー…、なしたー…?」
「…………」
「…あ、こらアカン…」
異変に気づき霊圧を強くしてみた。
ズンッ
「うわっ……あー…びっくりした」
「こっちの台詞や…寝てたでお前…」
「寝てないよー…現に今だって先祖だとか言うおじいさんと数分に渡る会話を…」
「死にかけてるやん」
確実に別の数字に刻まれようとしている三人。
「ダメだこれじゃ…ギンさんアイス食べよーアイス…」
ガリガリガリ…
「はー…生き返る」
「ほんまやなー…、なして持っとるん?こないの」
「現世物貯蔵庫からファイ君使ってちょろっと」
「ようやった」
アイス効果で少しだけ回復した。
今まで寝そべっていた廊下に座り、木陰で冷たさを享受する。
「にしても暑いなー…」
「もういっそ、炎天下より隊室に戻るとか。イヅにサボってたの怒られるけど」
「せやかて隊室の方が暑いやろ…機密書類が飛ぶ言うて窓開けられんから」
「そうだった…」
ふと、お互い疑問に思った。
今イヅルは…どこに…
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