「…まさかな」
「…まさかね」
ダダダダダダッ
ガラッ
「うわ!おった!」
嫌な予感が見事に的中。
隊室には机に伏せてピクリとも動かないイヅルがいた。
「うわ、ここ暑っ!…ってギンさん!イヅから滝のような汗が!」
「とりあえず避難や避難!」
――――――…
「だからゴメンってイヅルー」
「緊急事態やったんやてー」
「…二人仲良く言っても駄目です…」
びしょ濡れの髪をタオルで吹きながら、険しい顔をした吉良がいた。
「だってあんなに体中熱かったんだから、冷やさなきゃって思ったんだよ」
「確かにそれは間違ってないだろうけど…だからって池に投げ落とすことないじゃないか!」
実はイヅルを灼熱地獄の隊室から緊急避難させた後。
(間違いなくこのままやったら死ぬなーコイツ…)
(早く体中冷やさないと…あ、アレが良いかも)
(池か、ええなあ)
((せーのっ))
ドゴーンッ!
(………)
(………)
(…浮いてこんな)
(うん…あ、来た来た)
「…でドゴーンッですよ!?池に落ちたのに何なんですかこの音!」
「いや…ちょっと池に放るくらいの力やったんやけどな」
「思ったより放物線を描かなくて……」
レーザーのように池へ叩き込まれたイヅル。
「あなた達が二人で投げればそうなりますよ…それよりどうすれば良いんですか?隊室は使い物になりませんし」
「まーイヅもたまにはサボろうよー…」
「せやせや…」
「…あの、二人とも妙に具合が悪そうに見えるのは…」
その体に触れようとした瞬間、二人とも頭をぐらりと揺らして。
勢いよくその場に倒れ込んだ。
「ええええ!?ちょっ…四番隊の人ー!市丸隊長と名無し君が倒れたああああ!」
元々太陽に奪われつつあった体力を、隊室へ走るのとイヅルを池に投げ込むので使い果たした結果。
「し、死なんで良かったな…」
「そだね…」
76と77番目の被害者になった。
あの場にイヅルがいなかったら名誉ある1と2になっていたのだけど。
「結局イヅも倒れたし」
「最近疲れてたからかな…」
仲良く治療室に寝かされている三人。
「皆さんは四番隊に運ばれる時も一緒なんですね」
と卯ノ花に笑われた。
普段から散歩も食事も仕事も一緒なのに体の具合まで同じではシャレにならない。
「そう言えばファイ君も夏バテなんだよギンさん」
「ファイ君って具合悪ぅなるん?」
「なるよ、ホラ」
ずいっと布団の上で差し出されたピエロのファイ君がぐったりしている。
いつもは少しなら動くのに今はピクリともしない。
「あららほんまや。どないしたんやろね」
「うーん…ねぇイヅ、ファイ君の夏バテの謎を解明したいとは…」
「思わない」
今日も三人組は平和です。
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