見るとファイ君はお面が取れた顔をふかふかの両手で一生懸命隠しとって、そこにどんな顔があるのかは分からん。
けどそのせいでいつもみたいに名無しの首に抱きつくことは出来そうもなかった。





「ギンさ、ファイく、死んじゃうかなぁ…」

「改造魂魄やからそれはあらへんよ」



こちらもこちらでファイ君を抱いたり涙を拭ったりで両手がふさがっとる名無しをどうにか立たせ、その肩を押して進ませた。



「んー、とりあえず十二番隊の開発局やな…」

「ファイ君、実験台にされたりし、ない?」

「……………大丈夫やって。多分」



言い切れへんのが悲しいけど。









――開発局



「あー大丈夫っすよー。ちょっと飾りの部分と吸引口が壊れてるだけなんでねー、三日もあれば直りますよー」

「み!?」

「はい、急ピッチでやればそれくらいで済むっす!」



あっけらかんと答えてくれた開発局の子はありがたかったけど、かかる日付を聞いて固まった名無しを見て、それを喜んだんやと受け取るのは間違ってるで。



「またえらい懐かしい型が来たな。とっくに処分し終えたと思ってたんだが」

「阿近さん、物に改造魂はく入れる実験してた頃の資料まだ残ってますかね」

「おい下っ端〜、地下倉庫から資料探してこい」

「ええ!あの山からですかぁ!?」


「…はい名無し戻るでー」

「ファイ君ー!」



わあわあ泣く名無しを背負い、そんならよろしゅうとだけ告げてそこから逃げてきた。
これ以上おったらもっとあかん情報出てきそうやし。










小さな名無しの部屋に到着すると、名無しはぽってり腕から落ちて、まだ泣きじゃくりながら布団を引っ張り出した。
嫌なことは寝て忘れるんが解決策なんやろか、それは僕も同じやけど。



「ひっく、ギンさん、ありがとう…」



布団の中からくぐもった声が聞こえてきたから、気にせんときーとそこを撫でてやる。
まだまだ涙腺は戻らないらしい。
どこかで吹っ切れるやろうとそこまで大事には考えず、僕も隊室に戻ることにした。





「ああ市丸隊長。あの悲鳴何でした?」

「んー、ちょぉファイ君壊れたらしいんや。今開発局におるわ」

「そうでしたか」

「まあ名無しもその内戻るやろ」





そう思っていたはずが。




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