あんなに平和やった午前中をぶち壊す知らせは、隊長室屋根で昼寝をしとった僕の所にも速やかに届いた。
「ファイ君があああああぁぁ!!」
…名無しの悲鳴によって。
………多分、他の隊長さんの所にも。
なんやなんやと声のした方に駆けつけてみると。
「名無しー、名無しどこやー」
「ギンさん、ギンさ、ファイ君が、ファイ君がああ…!」
池の縁にぺたりと座り込んで力なく横たわるファイ君の体を抱きながら、泣きじゃくる名無しがおった。
「うわ、お前が泣くとかなしたん」
「ファイ、君がぁー…!」
これ、と見せてきた腕の中には、ファイ君の体と、いつもその顔に付けられとる陶器のお面。
そこにピエロらしい笑顔があるはずのそのお面は、なぜか半分に割れて名無しの手の中に落ちとった。
「さっき、そこで石投げしてた隊員の人が、間違ってこっちに投げて、それでファイ君に当たって…」
「こら酷いなあ、そんでその隊員はどいつやねん」
「これ…」
「へ?あ、うわ」
視線を指さされた方へ向けると、これ以上に見事な土下座があるかと言いたくなるくらいに頭をへりくだらせたどこぞの男隊員がおった。
これもう人としての尊厳捨てとるなあ。
聞けば返す言葉も無いほどに自分がやったのだと自白して、世の中がこういう子ばっかりやったらもうちょい悪人がのさばらんよなあとかそんなことを思った。
とりあえず土下座までされたから、所属の隊だけを聞いて帰したった。
今は名無しの方が優先や。
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