「ええやんイヅルー」

「ねーねー」

「仕事が溜まりすぎて当分は無理です。名無しも聞き入れろ」



ここで無視をされなかった場合、まだ押し切れることがあるので、二人で駄々をこねてみる。



「折角のええ天気やでー」

「休憩もしないとよくないよーイヅ」

「イヅルがおらんと寂しいなあ」

「なーギンさん」


「「行こー」」


「…分かりましたよっ、分かったから少し待っていて下さい!しょうがないですね!」



そう言って机の上を片づけた。
しゃがんでギンさんとこそこそ密談。



「…絶対行きたがってたよな」

「今日はそんなに強くお願いしてないのにねえ」

「素直やないなあ」

「ん、なに話してるんですか?」

「どこ歩こか話してたんやよなー名無し」

「なー」




ニコニコ笑って誤魔化した。
ギンさんがとりあえず笑っていれば何とかなると教えてくれてからそうしてるけど、本当にイヅの前では何とかなる事が多い。
しぶしぶ来たイヅを連れて、今日は並木道の方に歩いていく。

雛森ちゃんとかからは『仲良いね』ってよく言われる。
結構私とギンさんとイヅで一緒にいることは多いから。





「歩くときはギンさんが真ん中だよね」

「そういやそうやなあ」

「隊長ですからね」

「イヅルが右腕やな」

「わーい私左腕ー」



なんて呑気に話していた時。
何かが爆発するような大きな音が響いて、斜め前に生えている大きな木が根元から折れた。

驚いてそっちを見ると、姿を見せたのは一匹の虚。
本来なら私達三人の前に塵と化す予定だったのだけど、倒れた木がその体の虚に触れたとき、ピキッと灰色の石に変わったのを見て。




「へー、触れたもんを石にするんやな」

「ええ…斬りつけられないじゃないですか。どうするんです?」

「どうするの?」

「どないする?」



三人いっぺんにお互いの顔を見合わせて。





「……え、誰も意見ないんですか!?逃げましょう!」












…今に至る。




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