「僕は市丸ギンや、名無しちゃんもよろしゅうな」

「よろしゅー市丸隊長」

「何や堅苦しいなあ」

「でも元柳斎おじいちゃんに敬語を使いなさいって言われた」

「それほとんど守れてへんよ……ならさん付けはええやろ」

「市丸さん」

「数字みたいやな」

「じゃあギンさん」

「ああそれがええわ」





そんな会話をして市丸隊長はギンさんになった。
イヅルヤさんが起きるまでたくさんギンさんとお話をした。

ファイ君の性能だとかここに来てからのことだとか、たくさんたくさん。





「ん…」






その内イヅルヤさんが気がついた。



「おはよーさん」

「…あれ、今何か黒い物に攻撃されて気を失う夢を見たんですけど…」

「現実やでーイヅル。ほれ、黒い物ならここにおる」

「黒い物でーす」

「えええええ!?」




自分を気絶させた物体が目の前にいていくらか警戒していたけど、事故だったことを言って謝ったら案外すんなりとそれを解いてくれた。

ギンさんとは結構性格が違っていて、それが少し面白かった。










次の日。


「イヅル見てみいこれ」

「何ですかー…って、それ昨日の子のピエロじゃないですか」

「ピエロやあらへんよ。ファイ君言うんやて」

「いえどちらでも良いですが。それよりちゃんと断ってから持って来たんですか?」

「当たり前やん」



ドタドタドタ…


「ファイ君どこ行っちゃったのおおお!」





「……嘘つきました」

「…でしょうね」









朝起きたら布団の横に置いていたはずのファイ君がいなかった。
ついに自分で自分を飲み込んじゃったのかとびっくりして捜し回っていたとき、三番隊の隊室からイヅルヤさんが小さく顔を出した。



「名無し、こっちこっち」

「こっち?」



手招きされて入った昨日と同じ仕事部屋の中には、ギンさんと。



「…ファイ君!」



赤と白のまごうかたなきファイ君がいた。
私を見て小さく手を振っている。

勝手に持ってきてごめんなーと謝った辺り、私が寝ている間に持ち出したのはギンさんみたいだ。


 

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