ダババババババ…
池の淵にファイ君の頭を起き、その口から吐き出される水を眺めていた。
あ、何かアレみたい。
お金持ちの浴室とかにある口からお湯出すライオンの首みたい。
((水を出すなら外!))
とか言われたので、現況のカラッポになってる池の前にやって来て、そこでファイ君の口に手を突っ込んだ。
「ファイ君って吸うときは一瞬だけど、吐くときは時間かかるんだね」
結構ゆっくり溜っていく池の水。
時間をかけて全部戻し終わると、心なしかファイ君が軽くなった。
「おーファイ君、復活したかね」
そう言うと、OK!みたいな感じに右腕をちょっと振って答えた。
また元気そうな姿になってくれたから、ものすごく安心した。
良かった…一時はどうしようかと思ったよ。
池の縁にしゃがんで元気になったファイ君を見ていたら、
「ねぇ…あの現世の服着た子誰?」
「ああ、現世から来た三番隊の子よ…あの変な人形背負ってる…」
少し離れた所から、どこかの隊員の人の声が聞こえてきた。
何だか振り返れなくて、ファイ君を抱いたまま池の水面を見ていた。
「変な子よね…自分から三番隊に行ったらしいわよ」
「三番隊って変な人ばっかりなのに…総隊長も嘆いていたわ。なぜ市丸なんかの所に、って」
「あの子も変わり者なんでしょ。大体隊服も着ないし変な人形しょってるし、あいつは協調性が全くないってウチの隊長言ってたもの」
「浮いてるわよね…」
「現世から来たなら身分をわきまえれば良いのに…」
「…………」
ファイ君が心配そうに私の服を引っ張った。
「あー…だいじょぶだよ、ファイ君」
ファイ君はピエロのお面をかぶってるから、表情が変わらない。
それでも心配してくれてるんだって言うのは分かる。
「ファイ君は改造魂魄だったんだねー…可哀想にー…」
改造魂魄ってなんだっけ…ああアレだ。
どっか一部を特化した戦闘用擬似魂魄だか何だかで。
造られたは良いけどいらなくなったから殺されそうになってる奴だ。
「ファイ君が話せたら良いのにね」
でもファイ君の口は吸い込むために改造されたんだから。
きっとこれからも、話せないんだろうなあ。
「…変かなぁ…」
私はファイ君と一緒に、楽しくギンさんやイヅといたいだけなのに。
確かに得意な事もないし、協調性という物もないんだろうけど。
それでも皆でわいわい元気に過ごしていたい、っていうこの気持ちは。
変、なのかな。
「名無し!!!」
「うわっ!」
いきなり後ろから大音量で叫ばれた。
危うく水が溜まったばかりの池に落ちそうだった。
「い、イヅ!?びっくりしたよーもう…」
「さっきから呼んでるのに反応しないからだろ」
あれ、呼んでた?
「それはごめんね、どうしたの?」
「帰りが遅いから隊長に見てこいって言われたんだよ。ファイ君は直ったかい?」
「直ったよ。ほら見て、このファイ君の体内から吐き戻された池の水を…」
「リアルだからやめて」
「イヅ弱いー。きめー」
「だからキモいの使い方おかしいよ。
早く帰ろう」
「……帰る?」
「うん。早く市丸隊長のところに、帰ろう」
「…うん。ギンさんのとこ、帰る」
「じゃあ早く行こう。今日三人でお月見しに行くって言ったの名無しだろ」
「ファイ君も!」
「はいはい四人ね」
今日も三番隊は平和です。
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