うう、ファイ君一体どうしたんだろう。
この間まであんなに元気だったのに。
どっか壊れちゃったのかな、大丈夫かな……。





「そういや名無しとファイ君は現世からの仲やしな」

「ああ、名無しは現世出身だっけ」

「うん…」



現世からここに連れてこられて死神になった私。
現世の記憶は全然無いけど、ファイ君を拾った時のことだけは覚えてる。





「説明書きがあったら分かるんですけどね。取扱説明書とか」

「取説は無いやろー、あんなん物買った次の日には捨てるで」

「何てことしてるんですか!」

「え、イヅ読むの?」

「当たり前だろ。僕は始めから終わりまでアレを読んでからじゃないと買った物に手は付けません!」


「ある意味すごー!じゃあ取扱説明書持ってくる!」

「「あんの!?」」

















――――――…


「一、本製品は中に改造魂魄が入っています。ファイ君って改造魂魄だったんだ!」

「二、本製品の保証期間は一年以内…やて」

「三、本製品は食べられません…(は!?)」




部屋から取ってきたファイ君の取扱説明書を三人で読んだ。
こんな時に備えてきちんと保管しておいてよかった。



「故障故障…あった。『吸い込み不調の場合』」

「掃除機かい…」

「何て書いてある?」

「えっと『本製品は虚を吸い込んだ場合は即座に魂葬し、その他の物を吸い込んだ場合は瞬時に塵と化します。その吸い込みが弱まるなどの変化が起きた際は…」










『主に大量の水を吸引したなどの理由が考えられます』













「……orz」

「え、何その記号。名無し心あたりあるの?」

「……orz」

「市丸隊長も!?似合いませんよ!」

「本当はイヅが一番あるんだよ…心あたり」



私がそう言うと、へ?という顔つきになったイヅ。



「前に僕と名無しが隊室で熱中症なりかけのイヅルを助けたことあったやろ」

「ああ…池にブチ込まれた奴ですか」

「そうそう。あれで池にイヅを投げて浮いてきたのは良かったんだけど…イヅの体が池の中心にあって引き上げられなかったの」

「そんなことあったの!?」

「うん。それで手が届かないから池の水を抜いてイヅを引き上げたんだけど…」

「…まさかその抜いた水って…」



「ファイ君が吸った」



「やっぱりかああ!」



凄いよねーファイ君、あの量の水を一瞬だもん。
それは確かに壊れるかもしれない…。





「直し方書いてあらへんの?」

「書いてあるよ。口に手を突っ込んだら製品内の水は全部出せるってさ」

「…………」

「…………」

「…………」

「……あの、何で僕を見るんでしょうか」

「そらイヅルが原因やし」

「イヅのためにファイ君壊れたし」

「いっ池に投げたのは隊長達じゃないですか!」

「隊室で熱中症になっとったのはイヅルやで」

「体調管理は自己責任だよ」

「う……」



観念したみたい。
元々ギンさんに迫られると全く勝てないイヅなのに、そこにもう1人味方が増えたらどうなるかなんて明らかだった。





「手を突っ込んで…吸い込まれたらどうするのさ名無し」

「大丈夫だよ、きっと二三日で出られるよ」

「その他の物を吸い込んだ場合は瞬時に塵と化しますって取説に書いてあったろ!」



そう言えばそうだった。
取説って大事なんだな、これからもきちんと取っておこう。



「しょーがないなー。じゃあ私が…」


「「ストップ」」



 

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