短編 | ナノ






鶴を折る癖が治らない。


折り紙が好きだと言うわけではないけれど、私の手はいつも鶴を折ってしまう。
赤、白、蒼、緑、黄、桃、白、ちりめんに和紙、果ては半紙から書類の紙まで全て鶴に変えてしまう。
だから私の部屋は色は違えど大きさを揃えたとてつもない量の折り鶴が溢れ返っていて、とてもここに人は呼べない、頭のおかしい子だと思われる。
呼ぶのが頭のおかしい人なら別として。



「名無しの部屋は相変わらず鶴だらけやねえ」



例えば狐顔のこの人とか。
これでも押し入れの中身を処分した時、部屋を埋めていた鶴をしまったので幾らか減った方なのだと伝えても信じてもらえなかった。
確かにその分また折っているのだから当然と言えば当然なのかも知れない。
特別に部屋に入れる頭のおかしい人と認めた市丸ギンは私の部屋に踏み入るのも手慣れた物で、まず散らばっている鶴を避けてから踏まないよう入ってくる。



「こんだけ鶴だらけなら押し倒す場所もあらへんわ」

「ああ折っていて心から良かった」



冗談キツいなあ、とヘラリと笑うこの男とはもう数年来の関係でだ、からと言ってどうと言うわけでもない、相変わらず笑顔が減らないということは確かだ。
机の上に鶴、四隅に鶴、壁にあるのは繋がれた鶴の束、たまにあるのは色とりどりの折り紙か繋げるための針と糸だけ。
自分の異常さを認めてしまうならこんな女と一緒に居続けるギンも凄いと思う。
私が鶴を折り出したのはギンと出会ってからだから。



「もう向こうに行く準備できたの?」

「虚圏に持って行くもの何て何もあらへんよ。持ってくのは神鎗とー…」



そこまで言って言葉を紡ぐのをやめる、その先に私の名前を出すことが出来ないのなんて知っているのに、別れを伝えられた日から成長していないのは他でもない伝えたギンの方だ。







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