あの人は望遠レンズを覗きこむように世界を見ている。
つまりはひねくれ者だ。
雨は降らなくてもこの世界に月は昇る。
太陽がささなくてもこの世界に夜は降りる。
私は月が金色に見えたことはない。
ウルキオラから「取るに足らないのでお前にやらせても何ら支障は出ないと期待できる仕事」を与えられたから、自分なりにそれをこなしていたら草も眠る時間になっていた。
けどこの世界に草はないから誰も眠らない。
それがなんだか少し悲しくて、前に藍染様からもらった色紙の緑色のページを細かく切ってみた。
現世の葉の形が分からなかったから調べたかったけど、蔵書室は深夜は開いてくれないので頭の中で思い浮かべた葉の形を切りだした。
調理場から大きな銀のボウルをくすねてきて切り刻んだ緑の葉もどきを移すと結構な量になる。
前にこっそりもらったセロテープとやらも準備して、私は自分の部屋の壁に開いている窓とも呼べない四角い穴から外に出た。
空の色は真っ黒なのに、足もとの砂は白くさらさらと光っていて、少しも暗く感じない。
歩く音さえしないここでは世界で私一人だけになってしまったというより、私以外の世界がすべて終わってしまったように思えた。
虚夜宮の近くに乱立している堅くて白い疑似的な木を適当に選ぶと、砂を少し掘ったところにボウルを置いて安定させる。
そうして一枚一枚不器用に切り出した葉の形の緑を、セロテープで拙く木の枝に貼っていった。
確か葉は枝に交互に付いていたはずだから、そうなるように心がけもした。
そうして枝の二三本が何となく緑に染まってきたころ。
「相変わらず変なことしとるねえ」
後ろから相変わらずな声が聞こえた。
私は霊圧とかはよく分からないけど、何となく来るんじゃないかなあとは思ってたからあまり驚きはしない。
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