まだ死神の黒い服を着ていた頃縁側に座ったあなたの隣が私の居場所だった。
あなたは春には桜を夏には雨を秋には紅葉を冬には雪を、いつも縁側で一緒に世界を見せてくれた。
それだけであなたがどれほどこの場所が好きかくらいすぐに分かった。
私に世界の美しさを教えたのは他でもなくあなたなのに。
壊すだなんて簡単に言っているけれど。
本当は世界が 好きなんでしょう
抱きしめる私の体に腕が回ってすがるように服を掴んだ。
自分の声が震えていることにすら気づけないあなたをこうするために私をこの世界へ連れてきたと言うのなら。
それが絶対的なあの人へのたった一つの反抗だと言うのなら。
たとえそれが歪んだ愛の形だとしても。
それならせめて
綺麗に壊してあげましょうね
腕の中で微かに震える体が何も言わずに一度だけうなずいた。
本当に小さな嗚咽と共に服に染み込んできた涙はまだかろうじて、暖かくて、
居場所(神様)
(帰る場所を無くす代わりに私達は一体何を手に入れられるのでしょうか)
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