短編 | ナノ






「……っ」


涙で手元が狂う、折り目が合わない。
一体何羽の鶴をこの涙で殺してきただろう。
どうか、どうか何度生まれ変わってもいい、今度はあなたの物になれるように。
次はもう少しだけあなたが冷酷に生まれてくるように。
次はもう少しだけ私が脆く生まれてくるように。
また出会えたら皆が化け物と恐れたその赤い瞳で私を殺してくれますように。

何がいけなかったんですか。
置いていくくらいならと殺すことも出来ない優しすぎたあなたですか。
なのにそれを望んでいた私ですか。
顔をそむけつづける世界ですか。
一体あと何千何万の鶴を折ればこの願いは叶うのですか。


暗い部屋に浮かぶ灯籠のやわらかい灯りの下で散っていく赤、白、蒼、緑、黄、桃、白、こぼれた涙に映るそれら全ての極彩色。
こんな子供だましの物一つやめることが出来ない歯がゆさと、空しさと、鶴を繋ぐ糸一本にも満たないわずかな希望。

崩れるように床に倒れると、こぼれた涙で死んでしまった鶴は昼間にギンが手に乗せていた赤い鶴だった。
私が欲しいのはあなたを終わらせる物なのか。
それとも私を終わらせる、あなたなのか。





を捜して



(鶴を握って泣いたまま眠る哀しいこの頬へ僕が毎晩口づけを落としていくことを、君は知らない)


 




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