うずくまっているとあなたの足音が聞こえた。
もう長い間何度も何度も聞いて覚えてしまった、走るときでも静かな足音、大好きだった足音。
それを少しでも聞かないように気づかないフリをするように、必死で両耳を押さえて小さくうずくまる私。
閉じられた部屋。
だんだんと遠ざかっていくそれを聞くと安心してだけど、心のどこかではもう泣いてしまいそうで。
尸魂界は揺れていた。
旅禍の侵入、姿の見えない反逆者、近づく処刑の狼煙、四十六室の暗殺、誰もここで何が起こっているのか知らない。
事を起こしている人達しか。
だけど私は全部知っている、誰が何のためにこんなことをしているのかも全部。
いつもあなたが、ギンが長い人指し指を口許に当てて秘密やでっていいながら私だけに教えてくれた計画の全て。
そしていつも最後にこう言うの。
僕はここに残るわ、名無しを置いていけへんし
って。
私はそれを聞いて喜んだ、フリをしていた。
いつもみたいに楽しそうに元気に笑っていつもみたいに。
駄目なのよギン、そんなことしちゃ駄目、あなたはここに残っちゃいけないの私なんかのために。
あなたは向こうに行かなくちゃ。
でもどれだけ言っても聞いてくれないことなんて分かってた、そんなわがままなところも好きだったんだよ、大好きだったんだよギン。
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