ドスンッ!とぐおっ!と言う鈍い音が同時に聞こえてきて正気に戻ったとき、斑目第三席は床で伸びておられて。
やちるさんから拍手をいただいた。
「名無しちゃんすっごーい!
つるりんに一本背負い!」
「やるなあお前!」
「い、いえそんな…」
恐縮です、と言おうとした私の口が。
やちるさんの遥か後方を見てあんぐりと開いた。
「や…やちるさんすいません。失礼しますっっ!」
「ほえ?どこ行くの名無しちゃーんっ」
「いやああああ!追ってこないでください檜佐木副隊長!」
「追わなきゃ鬼ごっこにならねーだろー!」
何とこの方、未だに鬼ごっこを続けておられました。
先ほどやちるさんの後方にこちらへ向かって走ってくる檜佐木副隊長を見つけ、慌てて退散したのですが。
この人の走りの速いこと速いこと。
大勢の人の中だから私の姿は見え隠れなのでしょうけどそれでも確実に距離を詰めてきます。
「おいおい待てって名無しー」
「お願いです檜佐木副隊長!こういう追いかけっこは青い海の波打ち際でブロンド美女とやってくださいいい!」
と言うか檜佐木副隊長のスピードがどんどん増してきている…!
絶対ブレーキをかけても効かないか、そもそもかけないやつ…!
このままではタッチして「捕まえたー」どころではなく抱きつくか押し倒されるかされそうです!
そ、そんなの絶対に嫌!怖すぎです!
そんなことをされた日には男性どころかオスだって駄目になります!
なかば半狂乱で逃げていたとき、どこか遠くから私を呼ぶ声がしました。
「名無し!」
声の方を見ると、少し離れた場所で乱菊さんが一緒に走りながらこちらへ手を振っています。
て、天の助け!
恐らく私のこの体質をよく知ってらっしゃるから、泣きそうな顔で逃げている私を見つけて助け舟を出してくださったんでしょう。
でもどうやってそっちにー…と考えていたその時!
―ズドッ
「うおっ!」
ラッキー!倒れていた例の京楽隊長に檜佐木副隊長が足をひっかけてコケました!
チャンスだと言わんばかりに近くに来ていた乱菊さんにダイブ!
むぎゅうっ
「ふわっ?」
ダイブした瞬間乱菊さんからいきなりの抱擁。
な、なに?
「ちょっと檜佐木ー、あんた何やってんのよ。」
「あ、乱菊さん!名無し見ませんでした?」
え!?バレてないの!?
「名無しならあっちの方に逃げてったわよー」
「そうっすか!ありがとうございます!」
タタタ…と遠ざかっていく足音。
皆すごいよー。
乱菊さんのバストは人も隠せるんだよー。
「ふうー…もう大丈夫よ名無し」
「も…がっ…」
「あ!ごめんごめん!」
胸に挟まれて息が出来ない私をパッと離して解放して下さった。
「窒息死させちゃうとこだったわね」
いえ、男性に触れられてショック死するくらいならあなたのバストに埋もれて死にます。
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