短編 | ナノ






も、もうここから出たい…

それでも檜佐木副隊長のあまりの真剣さに光を軽く超える速さで走ったために、入り口と正反対の方向へ逃げてしまいました。

宴会場の奥へ行けば行くほどディープで乱暴な方達が飲んでいると言うのに何たる失態。



あまりの絶望にちょっとマンガで言う何本もの縦線をを頭部にセットしたとき、天使のような声が聞こえてきました。






「あ!名無しちゃーん♪」


「……やちるさん!?」




ガバッと顔を上げるとそこには可愛らしく微笑むマイスイートやちるさん。
なぜ男だらけの酒飲み大会へやちるさんがいるのでしょうかと思案を巡らせて、またしても私は自分の行動に絶望するのです。





「おお名無しか」

「「「「ちーっす!」」」」




十一番隊御一行様が一斉に私に挨拶をした。
そうですよそりゃそうですよ、やちるさんがいるんですもの、更木隊長達がいらっしゃらないはずありませんよ。



「名無しちゃんが男の人の中にいるの珍しいね♪」

「不可抗力なんです…」



泣きそうな顔でそう訴えていると、私の隣にどなたかがズイッとお立ちになりました。

もちろん私は30cm以上の間隔を取るために身を引きます。
命の30cmですから。



「名無しってえのはお前か?」

「は、はい…」



明らかに赤い顔で酔っていらっしゃると分かるのは斑目第三席。



「お前知ってるぜ。やたら虚を潰すのがうめぇらしいな」



うまいだなんて滅相もありません。
私はただ虚と言う名のサンドバックで日頃のストレスを晴らしているだけです。

女性死神協会が出来たとはいえ、まだまだ世は男社会。
お茶くみなどを頼まれた日には虚をワンパンで沈められます。

考えてよ!お茶を渡すだけでもプライベートゾーンに入るんだよ!





「い、いえ、ただの平の分際ですから。それでは失礼しま…」

「待てコラ」



何だかとてつもなく嫌な予感がしたから立ち去ろうとしたのに、斑目第三席の睨みで止められました。
分かってますよ、この先何を言うかだなんて。






「俺と殺りあえ」

「ホラやっぱり!」




絶対嫌です絶対嫌です絶対嫌です!

剣同士ならまだしも何ですかその構えは!素手ですか!?
死ねというのですね!?



「わーいやっちゃえー♪」

「「「ピーピー!」」」



ああやちるさん、あなたの顔が赤いのはもしかしなくてももしかですか。
未成年の飲酒は駄目なんだよ…





「へっ!上目使いで俺を見たって手加減してやらねえぞ!」



違います、首がすくんでるんです。









今チラリと私の目から何か溢れたような…涙じゃないよ、鼻水だよきっと。
などと嘆いていた時。



「よそ見してんじゃねぇ!」



ガバッと斑目第三席が私の襟に掴みかかりました。



「ひっ……触んなあああああ!」


ブオンッ


体が全身で拒絶反応を行って、つい掴みかかった斑目第三席の体を投げ飛ばしてしまいました。





 




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